ふたご座
月の光にみちびかれ
退く時間の中で
今週のふたご座は、アフリカの「暦」のごとし。あるいは、計数的な時間ではなく手触りのある出来事によって自分なりの生活リズムを整えていこうとするような星回り。
ケニアのカンバ族出身のジョン・S.ムビティの『アフリカの宗教と哲学』によると、アフリカ人の時間観念というのは、西洋人の直線的で、無期限の過去と、現在と、無限の未来といった時間観念とはまったく異なるもので、それは概ね次のようなものだと言います。
(アフリカ人の伝統的な観念によれば)時間は長い〈過去〉と〈現在〉とをもつ二元的な現象であり、事実上〈未来〉をもたないのである。(…)未来の出来事は起こっていないし、実現していないのだから、時間を構成しえないのである。確実に起こる未来の出来事や不可避的な自然のリズムにのった事柄はたんに〈潜在する時間〉を構成するだけで、〈現実の時間〉とはみなされない。現におこっていることがらはもちろん未来をひらくけれども、ある出来事がひとたび起こってしまえば、もはやそのことは未来にではなく、現在と過去に属するのである。だから〈現実の時間〉とは、現在のものと過去のものである。時間は「進む」というよりも「退く」ものであり、人びとは未来のことを思わず、すでに起こった事柄を思うのである。
数カ月を超えた彼方の未来というのは伝統的なアフリカ人にとって「存在しない」のであり、したがって遠い未来のために計画したり空中楼閣を築くこともなければ、そこから不安を引き出し、心身をこわばらせることもないわけです。
さらに、ムビディは暦についても言及していて、「1年は日数によってではなく、出来事によって数えられ」「1カ月は数字的な月数ではなく、月の満ち欠けによって知られ」、「狩猟月(と名を与えられた月)が25日続いても、35日であってもかまわない。日数よりも出来事の方が肝心」なのだと述べています。
11月1日にふたご座から数えて「自己規律」を意味する6番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、できるだけなまなましく存在する「現実の時間」を生きられるよう、自身の使う暦を見直してみるといいかも知れません。
2つの異なる「変身」
子供の頃にセーラームーンに親しんでいた世代ならば、普通の高校生である月野うさぎが美少女戦士セーラームーンに変身するとき、光に包まれて一瞬だけ裸になるシーンがあるということをうっすらと思い出すことができるでしょう。
子供の頃は、そうした変身シーンに垣間見える、脆さと恍惚とが危ういバランスで同居しているような、あるいは、真実が一瞬そこに現れているような、そんな体験を自分も当たり前のように経験できるはずだと感じていたのが、大人になるにつれ、いかにそれが実際には体験しがたいことなのかを痛感しては、次第にそのこと自体を忘れ去ってしまうはず。
というのも、大抵の人はみずからの脆さや傷つきやすさを覆い隠し、なかったことにしようと、化粧や筋トレ、出世や結婚などによって「変身」しようとしていくから。しかし、その点セーラームーンはまったく違います。脆さや傷つきやすさを認識し、その中で感じ得た恍惚を通して、新しい自分の顔を表出していこうとしているからです。
今週のふたご座もまた、そうした2つの異なる「変身」の仕方があるのだということを踏まえた上で、後者の「変身」へと舵を切っていきたいところです。
ふたご座の今週のキーワード
自分に魔法をかける