ふたご座
響きと交わり
死者の消息
今週のふたご座は、死者の念願としての現世の事業の引き継ぎのごとし。あるいは、さまざまなことを思い出していくような星回り。
日本人の多数が、もとは死後の世界を近く親しく、何かその消息に通じているような気持を、抱いていた。
戦争中に書かれ敗戦直後に出版された柳田國男の『先祖の話』の一節です。多くの人が死に直面する中、日本人の死後や霊魂の観念がもともとどのようなものであったかを解明せんと書かれた本書では、日本の神は先祖神に由来するという大胆な仮説が立てられました。
柳田は庶民の生活文化の中で、死後や霊魂の問題が「家の継承」や「先祖崇拝」と結びつけられてきた旨について、4つの観点に整理した上で次のように述べています。
第一には死してもこの国の中に、霊は留まって遠くへは行かぬと思ったこと、第二には顕幽二界の交通が繁く、単に春秋の定期の祭だけでなしに、いずれか一方のみの心ざしによって、招き招かるることがさまで困難でないように思っていたこと、第三には生人の今はの時の念願が、死後には必ず達成するものと思っていたことで、これによって子孫のためにいろいろの計画を立てたのみか、更に再び三たび生まれ代わって、同じ事業を続けられるもののごとく、思った者の多かったというのが第四である。
ただこの説は十分に客観的な根拠を持っておらず、柳田以降忘れ去られ、社会の表面からも消え去っていきましたが、未曽有の危機となった東日本大震災やコロナ禍以降、日本社会の中でもう一度検討されるべき死生観として再浮上してきているように思います。
同様に、9月3日にふたご座から数えて「心的基盤」を意味する4番目のおとめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そうしていつの間にか忘れ去られていた伝統や結びつきを改めて今の自分に必要な形で受け継いでいくことがテーマとなっていくでしょう。
いのちを革める
すべての生命現象には“波”がある。山があれば谷があり、谷があれば山がありといったように、両者はなだらかに移行しながら交替していき、吸収・増殖と排泄・分化の双極的営みによってたえず自己更新を行っていく――。
食と性に代表されるような、こうしたいのちの波の作り出す拍動を「宇宙交響」と呼び、これより根の深い生命記憶はないと述べたのは、解剖学者の三木成夫でした。
三木によれば、高等動物などの多細胞生物の場合、たがいに相手を見出して卵と精子の結合によって行われる性の営みは、単細胞生物の場合は2つの個体のあいだで核物質の一部の交換という形で行われるのだそう。
すなわち、比較的大型の雌核と小型の雄核の両者を備えた同士で、後者の雄核のほうが交換要因となって、ふたたび離れることで、単細胞生物のいのちは革まるのです。今週のふたご座もまた、どこかでそうした原始的な本能に従いつつ、みずからを革めていくべし。
ふたご座の今週のキーワード
うなれ生命讃歌