ふたご座
我と汝
もぞもぞ
今週のふたご座は、『秋風や汝の臍に何植ゑん』(藤田哲史)という句のごとし。あるいは、自分の「キモい部分」が隠しきれなくなって表に出てきてしまうような星回り。
目の前で裸のまま寝ている「汝(なんじ)」を見ていて、そこに爽やかな秋風が吹いてきたという一句。
「汝」という言葉は、あんまり日常的に使う言葉ではありません。つまり、普段何気なく接している「あなた」や「お前」がいつも以上に特別な存在に感じられてきたということなのでしょう。
さらに、なぜだか汝の「臍(へそ、ほぞ)」に妙に目がいって、そこになにか種を植えたら、にょきにょきと育っていきそうだな、なにが実るのかな、というようなことを妄想していたのかも知れません。つまり、ここでは「臍」は種を植える穴であり、汝の裸体は豊かな作物をもたらすであろう恵みの大地となっている訳です。
「何植ゑん」となんだか格好のいい言い方はしていますが、言っていること自体は冷静になってみるとちょっとキモい。その意味では、そういう「キモい自分」をこっそり切り出している句なのだとも言えるのではないでしょうか。
8月26日に自分自身の星座であるふたご座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、普段自分でも気付いていなかったり、さっと隠してなかったことにしているだろう「自分のキモさ」を、そっと誰かどこかに打ち明けてみるべし。
軽んじることなく、封じ込めもせず
誰もが臆病な自尊心が傷つくの怖れて、直接間接いずれのコミュニケーションにおいても何重もの自己防衛のクッションを挟み込んでいくことに余念がない現代のような時代において、たとえば王朝時代のような歌による「恋の告白」なんてものは、もはやファンタジーの世界でしか起こりえない非現実的な行為と言えます。
フラれるかもしれないし、バカにされることだってありえる。既読スルーどころか、魚拓をとられて情報を回される可能性だってある。そんな地雷原のようなコミュニケーション環境にあって、自身の本心や妄想を誰かに告げるということは極度にその意味が軽くなるか、ついに言いだせず胸の中に封じ込められるかのいずれかに二極化していくのは必然でしょう。
けれど、そんな時代だからこそ掲句のように本心や妄想を告白する上での形式の洗練ということも追求できるはず。
今週のふたご座もまた、そうしたギリギリのラインを一歩踏み越え、勝負に出ること、舞台の上にあがることがテーマとなっていきそうです。
ふたご座の今週のキーワード
切実であることはそれ自体に価値がある