ふたご座
意識が遠のいた先で待ちうけているもの
「遠さ」の重なりあい
今週のふたご座は、『散る花のなかなる幹のふと遠し』(村上鞆彦)という句のごとし。あるいは、ふっと意識を遠くの方へと切り離していこうとするような星回り。
桜の花びらが目の前をひらひらと舞い散っている。そのはかなさと表裏の色っぽさに、ついつい私たちは目を奪われるどころか、すすんでそうして目線を惹きつけるものに酔おうとする。私たちは自分のことは自分が一番わかっていると強がる一方で、いつもどこかで何か得体の知れないものに魅了されていたいのだ。
ただ、そんな魅惑的な光景にたたずんでいるうちに、作者はふとその奥に「中なる幹」が見えているのに気付いた。その瞬間、手前で舞い散る花びらが手前に溶けて、幹へとピントが切り替わってしまったのだろう。そして、物理的には幹は花びらが舞い散るすぐそばにあるはずなのに、ひどく遠く感じられたのだと。
この遠さとは、いったん過ぎ去ってしまえばもう決して後戻りできない過去の遠さであり、一度断ち切ってしまえばもう二度と同じようには関われない人と人との間柄の遠さであり、あるいは、頭をよぎる考えや口をついて出る言葉から、自分でも気が付かないほど地の底へと埋葬し抑圧してしまった無意識的な思い、本心の遠さであったのかも知れない。
そして、4月21日にふたご座から数えて「リセット」を意味する12番目のおうし座で木星と天王星の合(センセーション)を迎えていく今週のあなたの元にも、そんなさまざまな「遠さ」がもたらされていくはず。
余白という不穏
あなたが最後に心から笑ったのはいつですか?もしそれがすぐにパッと思い出せないくらい前のことならば、それがあなたの世界のアウトラインなのかも知れません。
そして、そうした世界のアウトラインの周辺というのは、大抵は普段言いたくても言えずにいたこと、現わそうとしても現わせなかったことが、自分と世界とのあいだの「余白」の中から突如としてバッと飛び出してくる不穏な気配に満ちているもの。
余白のところは、別に「なかなる幹」に限らず、裂け目でも断崖でも、荒れ寺でも夢魔の棲み家でもいいんです。
だいたい、他の人は気にもしていなかったり、そもそも見えてもいなかったり。でも、こちらでだまってジッと見ていると、不意にこみあげてくるものがあるはず。
今週のふたご座は、モノであれヒトであれコトであれ、そういう不穏な気配のするところに、いつも以上に惹きつけられていきやすいでしょう。
ふたご座の今週のキーワード
余白という不穏