ふたご座
心地よいゆらぎを
乱数的な、自然のなまなましさ
今週のふたご座は、「衆(おほ)く有(ゆた)かに我らゝゝゝゝ虎落笛」(高山れおな)という句のごとし。あるいは、規則正しさよりも生々しいゆらぎを宿していくこと。
「衆」は数が多いこと、「有」は何かが確かに存在していることをそれぞれ意味しており、じゃあ何がそうなの?という疑念を持たせておいたところに、「我ら」ときて、さらに「ゝゝゝゝ」である。「我ら」の「ら」を音楽の「ララララ」のようにして、それを踊り字で表すことで、まるで跳ねた音符のように生命を持たせ、結びへと繋げていく。
「虎落笛(もがりぶえ)」とは冬の寒風が柵や電線などに吹きあたってヒューヒューなる現象のことですが、ここではそれがある種の「わびさび」として、つまり存在することの悲哀や無常さを思い出させてくれる合図として、あるいは、確定化も定量化できない“間”としてあるわけです。
虎落笛がヒューとひとつなると、次のヒューが鳴るまでに自分の頭の中のアイデアだったり、自分の中のいろいろな声だったりが、わらわら出てきては増殖していって、それがヒューとなると静かになったり、わけもなく哀しくなったりする。
そうやってただ規則的にペタンと描かれた草むらのように存在していくんじゃなくて、いい感じにゆらぎのある、乱数的な自然に近づいていくこと。それこそが、19日に自分自身の星座であるふたご座で満月を迎えていくところから始まった今週のあなたのテーマとなっていくでしょう。
発語の成熟
例えば「言霊」をもったことばとはどんなものか、ということについて真剣に考えてみるのもいいでしょう。奈良時代の語彙を収集した『時代別国語大辞典上代編』(三省堂)では、「言霊」について次のように記述しています。
ことばに宿る霊。ことばに出して言ったことは、それ自身独立の存在となり、現実を左右すると考えられた。名に対する禁忌の心持とも共通する信仰・感覚である。
ふだん自分が口に出して言っている言葉だけでなく、PCやスマホでなんとなく打ち込んだり、検索している言葉、LINEでよく使っているスタンプなど。それらを改めて見直した上で、自らの存在価値をその上に置いていきたいと心から思えるような言葉を定めて、自覚的に口に出し、打ち、書いてみる。言霊が宿っていれば、必ず乱数的になるはず。そうしたプロセスをここでは「発語の成熟」と呼びたいと思います。
そうしたきちんと成熟した発語は、繰り返される度に人生という現実にしっかりと根を張っていき、やがて立派な大樹となってあなたを守ってくれます。さながら、1冊の書物のように。今週のふたご座は、思いつきをすぐに発してしまう前に、できるだけ等身大の自分に馴染む言葉を探してみてください。
ふたご座の今週のキーワード
心に響く言葉には必ずゆらぎがある