ふたご座
言いたいことを言う!
この世はでっかい映画館
今週のふたご座は、「柚子は黄に席は自由に映画館」(中山奈々)という句のごとし。あるいは、誰が何と言おうとこれでよし!と勢い勇んでいくような星回り。
普通だったら思いついても口にしたりしないようなことも、俳句だったら口にできる。そういう愉しみ方を感じさせてくれる一句。
柚子が黄色くなってくると、いよいよ寒くなるんだなぁと晩秋の感が深くなりますが、掲句ではそこでヘンに感傷に浸るのではなく、音の連なりで遊びつつ、そのテンポにのっかるように、映画を通してこれまでと異なるリアリティへと素直に旅立とうとしています。
あるいは、単に待ち時間のあいだにビールをいっぱいやって、ポンと灯ったランプの灯りを柚子に見立てて、そのまま暗がりのなかをふわふわした気持ちで席についたのかも知れません。
いずれにせよ、どうせ映画を見るならば、これくらいのテンションで見たらさぞかし楽しめるだろうなと感じさせてくれるのは、たぶんに句に滲み出た作者の無邪気なキャラクター性が大きいように思います。
11月5日にふたご座から数えて「自分なりの流儀」を意味する6番目のさそり座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、もっともらしいことを言おうとするのではなく、自分なりのテンポやリズムを大切にして過ごしていきたいところです。
すべては真剣であり、ばかばかしくもある
19世紀末フランスで活躍し、2度のタヒチ滞在を通じてプリミティヴィズムに強く影響を受けたポスト印象派の画家ゴーギャンは、最晩年に或るエッセイ集を遺しています。
その中に「人生とは」という少々野暮ったい表題のエッセイがあり、冒頭で「人生とは、人がそれを意志的に実践するのでなければ、少なくともその人の意志の程度にしか、意味を持たないものだ、と私は考えている。美徳、善・悪などはことばである。もし人々が、それをひき砕いて建物を建てるのでなければ、(中略)意味を持たない」と述べています。
ずいぶん率直に物申す人だなと思っていると、唐突に「私は、愛したいと思いながら、それができない。私は愛すまいと思いながら、それができない」と告白するのです。
彼はけっして愚かではなかったものの、だからといって生き方がうまい訳でもなかったのでしょう。彼の文章はそんな特質を反映するように、まどろっこしく、不安定なのですが、それも「すべては真剣であり、ばかばかしくもある」といった少しの本音を隠すためのカモフラージュのように思えてきます。
今週のふたご座もまた、得意になるためでも、後悔するためでもなく、ただ純粋に自分自身のために何かを表現していくことがテーマとなっていくでしょう。
ふたご座の今週のキーワード
すべては真剣であり、ばかばかしくもある