ふたご座
むきだしのあそび
蛙ぴょこぴょこ
今週のふたご座は、「むきだしの命はねたり青がえる」(小沢昭一)という句のごとし。あるいは、自意識の牢獄をスっと脱け出していくような星回り。
人間をして「むきだしの命」と言えるのは、赤ん坊と子どもくらいで、あとはどうしてもそこに無意識のうちに自己防衛が入ってくるもの。その意味で、掲句は大人の人間の立場から蛙へのあこがれを表明した句なのだと言えます。
なぜなら、蛙は生涯にわたって裸だから。ほかの動物は毛皮やうろこに覆われていますし、無力な人間にいたっては服や化粧や社会地位など、あらゆる価値で武装しようとします。
むろん他にも裸の動物はいるはずですが、こんなにも身近にいて、こんなにも可愛らしいという点で、やはり憧れの対象となるとすれば、それは蛙こそがふさわしいのです。
まるで命そのものがはねているかのように、笑ったり、遊んだり、走ったり、誰かを好きになったり、それを伝えたり。そういうことを隠さず、恥ずかしがらず、自然にやれることの素晴らしさを、作者は心から大事に思っているのでしょう。
17日にふたご座から数えて「自然な愛の発露」を意味する5番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、少しでも蛙を見習ってぴょこぴょこするべし。
「世界は劇場。人生は演劇。人間は役者。」(シェイクスピア)
子供の頃のことを思い出してほしい。
そこではまず最初に楽しい世界があったり、十分な遊び相手がいて、その後に遊びの楽しさがあった訳ではなかったはず。むしろ、なんとなくはずみや思いつきで始めた些細な遊びにフッと取り込まれ、はまりこんで夢中になり、完全にそれに舵を取られてしまったとき、はじめて遊びが遊びとして実現していったのではなかったでしょうか。
これは、最初はほんの遊びのつもりでいたのに、いつのまにか遊びの世界に遊ばれていくと言ってもいいかも知れません。
同様に、今週のあなたもまた、何も考えずに「古池に飛び込んでいった蛙」や、初公演の舞台に臨む役者ような心持ちで、演劇世界に誘われていくことになるはず。
「遊び」を表す欧米語(英語のplay、ドイツ語のSpiel、フランス語のjeuなど)は、「演技」や「演奏」といった意味も表わしますが、その意味で、今週のふたご座は、うまく行けば、ようやく実現しつつある「遊び」の世界に本格的に参入していくことになるでしょう。
ふたご座の今週のキーワード
現代アートのパフォーマンスとしての日常生活