ふたご座
問いとともに思い出す
プラトンの想起理論
今週のふたご座は、さながらアナムネーシス(想起)の発動。すなわち、父母未生以前の記憶を思い出していくような星回り。
プラトンの対話篇『メノン』において、哲学者ソクラテスは学問などしたこともない奴隷の少年を相手にして、正方形の面積について図を描きながら問いかけていきます。
はじめ、一つの辺を2倍にすると面積も2倍になると信じていた少年も、図を見ることによってそれが間違いであることを認識していきます。それはあたかも、「誰も教えないで、ただ尋ねただけであるのに、この子は自分で自分のうちから知識をふたたび取り出して、それによって知識をもつようにな」ったかのようだとソクラテスは表現するのです。
これが学ぶということはすでに獲得していた知識を想起する(アナムネーシス)ことであるというプラトンの想起の理論であり、さらにその知識はいつ手に入れたものなのかという疑問に対して、「魂は不死であって幾度も生まれてきており、この世のこともあの世のこともすべて見尽くしている。だから、魂が学び終えていないものは何一つないのである」と語らせています。
そして、おそらく何かを真摯に問うことこそ、こうした想起のいちばんの発動条件なのではないでしょうか。
22日にふたご座から数えて「神聖な問い」を意味する9番目のみずがめ座の始まりで木星と土星の大会合が起きていく今のあなたもまた、神殿の巫女に投げかけるようなつもりで、心から思い出したいと思ったことを問いにしてみるといいでしょう。
心虚しく
「多くの歴史家が、一種の動物に止まるのは、頭を記憶で一杯にしているので、心を虚しく思ひ出す事が出来ないからではあるまいか」という小林秀雄の言葉を借りれば、今週のふたご座はまさに心を虚しくして、そこで何かしら自分の心にひっかかってくるような、かけがえのない繋がりを感じることができるかどうかが問われているのだと言えます。
横にいたら嬉しい、いなくなったら寂しい、そんな当たり前の感情を、多くの人はつまらない屁理屈で台無しにしてしまいますが、小林は先の言葉の直前で次のようにも書いているのです。
思ひ出が、僕等を一種の動物である事から救ふのだ。記憶するだけではいけないのだらう。思ひ出さなくてはいけないのだらう。(『無常という事』)
今週あなたは、何を思い出すのでしょうか?そこで想起されてくるものがどんなものであれ、しかと胸に刻んでいきましょう。
今週のキーワード
無常に咲く花