ふたご座
奈落と地層
垂直的探査
今週のふたご座は、「君がいないと、まるで面白くならない」とうそぶく腕白小僧のごとし。すなわち、一触即発の引き金を平気な顔でひいていくような星回り。
たとえば小説や詩であれば、ありもしない光景や現実には存在しない人物をでっち上げ、幻想とほらを吹き込んでいくことができます。ですがだからと言って、詩人は嘘つきであり、写実画家は正直者だとは言えないのが面白いところ。
人の心に突き刺さるのはつくりだされた表現のどこかに、現実と地続きの地層が折り重なっているのが見えた時でしょう。さらに言えば、自分なりの現実と地続きの下に隠れていた、ずっと古い地層が露呈してきた時です。
「奈落より更に奈落へ蕨取り」という佐々木まきの句などは、古代そのものの感覚ですが、それがどこかで日常に繋がっている。そういう現実の地層を垂直に運動していく感覚を、今週は呼び起こしていきたくなるかもしれません。
重ねた年齢という地層
芸術家の世界でよく言われているように、若いころにつくった初めての作品の中に、後年の作品の芽が端的に現れていることが多く見られます。
それは誕生から死までほとんど変わらない一粒の種子が、人生全体を包むような核心を成しているように、人の本質はそうそう変わることがないということを我々に教えてくれるよい例でしょう。
特に子どもというのは経験より想像力に頼るため、その時期に「何を作りだしたか」が、良くも悪くも深くその人の本質を形成してしまうのです。
年齢を重ねると様々な経験は身に付きますが、みずからの想像力の原点を見失ってしまう、という側面もあるはずです。今週は、そんなかつての自分や幼い頃の記憶という古い地層を探ってみるのも一つの手でしょう。
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