ふたご座
背景が語り出す
しょうもないと、せつない
今週のふたご座は、「ガーベラ挿すコロナビールの空き瓶に」(榮猿丸)という句のごとし。すなわち、何気ない風景の中に性とか愛を置いてみるような星回り。
「ガーベラ」は夏の季語で、赤やオレンジや黄や白など、色とりどりに大輪の花を咲かせ、切花用におおく栽培されている花。この句、コロナビールとの取り合わせがいいですね。
これがストロングゼロのロング缶だったら、かえって悲壮感さえ漂うところですが、朝部屋で飲みかけのコロナビールをほして、久しぶりにいい夜だったな、とか思い出しながら、空になった瓶にすっと一本のガーベラを挿す。
そこには、かすかだけれど確かな余韻が広がっている。赤やオレンジのガーベラの花言葉は「神秘」。ああ、本来はそういうものだったな。お酒の味も、誰かと仲良くなるということだって。
そうだったそうだった、と記憶をさかのぼりながらベランダに出て、一服する。あるいは、なんとなく朝の景色を眺める。愛欲なんて、そういう淡い呼吸みたいなものを時々あいだに置いていかないと、簡単にペラペラの記号になってしまう。
26日未明にふたご座から数えて「他者との折り合い」を意味する7番目のいて座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした呼吸や取り合わせの感覚を大事にしていきたいところです。
コミュニケーションの妙
コミュニケーションには、企業などとの契約や裁判所の判決など話の中身が大事にされなければならない場合がある一方で、話をしている者同士が存在している情景の雰囲気、つまり抒情性の方が大事にされていく場合がありますが、今週のふたご座にとって重要なのはおそらく後者となっていくはず。
ただし、それは「同じ話をするのでもこの場所ですればより効果的!」といったような、分かりやすい効果を狙ったテクニックや、くだらない駆け引きのためにシチュエーションを利用せよ、といった話ではもちろんありません。
そういう「私」を主体としたコミュニケーションではなくて、その背後に隠れた「背景」に語らせていくことで、互いの関係性の中に言葉にはできないような特有の雰囲気が取りこまれていき、ムードが出来上がっていく。
今週はそうしたプロセスをさっと味わいつつ、人と人とが縁や絆を結んでいくことの(あるいは、解れていくことの)リアリティーを感じていくことになるでしょう。
今週のキーワード
背中が物を言う