ふたご座
糠床と幹の穴
キラキラからクラヤミへ
今週のふたご座は、「サングラス取り糠床へ膝まづく」(西山ゆりこ)という句のごとし。あるいは、ありったけの力で小さな日常に潜っていくような星回り。
5月は世界がもっとも麗しく輝いて見える月であり、日差しが夏へ向けて急激に強く明るくなっていきます。冬から春にかけてしまっていたサングラスを大型連休を機に取り出すという人も多いでしょう。
掲句では、そんな華やかで浮き足立った光景にひもづくアイテムである「サングラス」を冒頭でいきなり「取る」とした上で、「糠床へ膝まづく」と一気に畳みかけることでトーンのガラリとした転換を印象付けています。
外から内へ。景色がまぶしいキラキラから、漬け物うごめくクラヤミへ。すなわち、分かりやすくて見栄えのする大きなドラマから、一見そこで何が起きているか分からないし分かりずらい小さなドラマへ。
こうしたどこか漫画的な視点転換は、そのまま今のふたご座の目線の運びとも重なっていくように思います。
7日にふたご座から数えて「奉仕と健康」を意味する6番目のさそり座で、満月が起きていく今週のあなたにとって、自分の健全で自立的な日常を支えてくれるささやかだけれど確かな影響力に存分に浸っていくことこそ、もっとも大事なテーマとなっていくでしょう。
バッカスの饗宴
例えば、道ばたの野っぱらに一本の樹が立っていて、その幹には蝶や黄金虫、羽蟻や蜂などたくさんの虫たちが群がっている。
よく見ると、樹の幹には穴があいていて、周囲の樹皮がまくれ上がっており、虫たちはその穴のまわりに群がっている。人間の眼には、おそらくおぞましく気味の悪いものに映る樹幹の吹き出物も、虫たちにしてみれば強い誘惑の魅力があって、数多くの昆虫を引き寄せている。
そこはいわば、虫たちのバッカスの饗宴の場であり、何か名状しがたい、人間にはとても近寄ることさえできない、恐ろしいようなすごいものがあるのに違いありません。ですが、野っぱらの樹にあいた穴に顔をつっこんでいく人間はほとんどいません。ことほど左様に、そうしたふしぎな力を持つ場はふだん人間たちからはごくありふれた光景として打ち捨てられていたりします。
小さな日常は、本当はぜんぜん小さくなどないのだ。今週のふたご座は、それを身をもって体感しようとしているのかも知れません。
今週のキーワード
不思議おもしろい