ふたご座
時代と刺し違える
無数の少年少女
今週のふたご座は、「少年来る無心に充分に刺すために」(阿部完市)という句のごとし。あるいは、不安定な時代の波と不思議と感応していくような星回り。
掲句は、安保闘争や学生運動が盛んだった1960年代前半に精神科医でもある作者によって詠まれた句。もちろん、時代の雰囲気を直接的に反映している訳ではありませんが、この句のような少年少女が、何か途方もないことをやるかも知れないといったなまなましい不穏さを確かに漂わせています。
通常の俳句のように情景や場面を具体的に想像させる手立ては与えられていないことが、かえってそのあたりを普通に歩いていそうな何人もの、さまざまな少年少女像を浮かび上がらせている。いずれにせよ感受性がピリピリと研ぎ澄まされた、その不安定で危うい存在感が伝わってくるはず。
今の時代であれば、そうした少年少女はネットやSNSの片隅で、誰に向かって言っているのでもない、それでもつぶやかずにはいられない一方通行な思いを吐露しているかも知れません。
23日にふたご座から数えて「集合的無意識へのアクセス」を意味する12番目のおうし座で、新月を迎えていくあなたもまた、誰かがどこかでくすぶらせている行き場のない思いを拾ってきては、それを無意識のうちに自分の言葉へと反映させていくことでしょう。
無心に充分に
掲句の「無心に充分に」何かに打ち込んでいる様子は、見方を変えればまるで川の上流をせき止める遊びに真剣に打ち込む子供のようでもあります。
ひとしきり自分の世界に没入した後には、ある種の虚脱状態が訪れる。その時すでに外部の声は遠く、いつもなら気付かず聞き逃してしまうようなかすかな音も妙に耳に入り、まるで乾いたスポンジのように貪欲に音や声を吸い込んで、それらの発信源や正体を全身で突き止めようとする。それは、今週のあなたの姿そのものでもあるようにも思えます。
もちろん知らんぷりをして、適当にやり過ごすこともできるでしょう。しかし、もし今あなたが少しでも自分の人生が悪い流れに行きかけていると感じているなら、事なかれ主義を捨てて一つの決断をしていく時です。
すなわち、一度アクセスしてしまった情報をふたたび絨毯の下に隠して何事もなかった“ふり”をしていくか、そうした問題の根源と取っ組み合いをしながら、また一から自分や自分の人生を作りなおしていくか。どちらを選ぶにしても、こころしてください。
今週のキーワード
時代霊とその憑依