ふたご座
愛と生霊
虚無の排出としての自己表現
今週のふたご座は、まるで生霊(いきすだま)。あるいはある虚無の排出。
何かを書いたり、熱心に話したりするということは、言葉が介在するかぎり、その人の一番奥の方に巣くっている生霊(いきすだま)を放ってしまうということ。
そして普段、自分でも忘れている生への恐れや、上手に隠している悪の部分を世間へ透かしこんでいくということです。
したがって、人を傷つけもすれば、自分も血を流す行為であり、考えれば考えるほどすれすれの振る舞いである。
しかも、それを何かしら「芸」として売り出すようなあざとい真似をしている者なら、皆すべからくロクデナシと決まっている。
でも、そんな業さらしな真似をせずにはいられないのも人間の本性。
どれだけ嫌気がさそうと毒気にまみれようと、いったんその行為に加担してしまえば、元には戻れずのめり込むばかりで、それらの営みと共に生死を超えて往くしかないのです。
今週は、普段自分のしでかしていることの恐ろしさとむごさを抱えながら、それでも何かしらに向けてを発信していく自分の姿を、よく見つめていくといいでしょう。
「上を向いて歩こう」
全米でも大ヒットを飛ばした坂本九の「上を向いて歩こう」の作詞を手掛けた永六輔さんによれば、この曲は「歩く歌を作っておきたい」「それも泣きながら」という会話から生まれたのだそうです。
それはいったいどんな状況なのかと普通ならば考えてしまうかもしれませんが、「虚無を排出する」というのは、そういうことなのだとも言えます。
そして、この曲が作詞家と歌手という2人の生き霊(いきすだま)が合わさった合作であったように、何かを表現していくという営みの憑き物が落ちる時というのは、表現者同士が出会い、そこで「さみしいね」「さみしいな」という会話が交わされた時だったりするんですね。
つまり、虚無の排出は、悲しく、寂しいこの世を生きる者同士の交流においてのみ行われていくし、それは「I Love You」よりずっと切実でご大切な言葉なのだと思います。
今週のキーワード
ご大切