ふたご座
不思議なまでの生命を
井の外へと踊り出す蛙
今週のふたご座は、「冬のひき川にはなてば泳ぎけり」(飯田蛇笏)という句のごとし。 あるいは、「大海を知った蛙」として実際にアクションを起こしていくような星回り。
インターネットやスマホで情報チャンネルが多様化し、入ってくる情報の深さや広さが格 段に増したことによって、かつてのように「井の中の蛙」で居続けることが困難となり、誰もが「大海を知った蛙」であることを余儀なくされている時代にあって、どうあるか。
掲句はそんな時代状況に対しどのように応答していくべきかということを、さながらタロットカードのように、ある種の象徴的な展開を示してくれているように思います。
寒さの中に春を見出すかのような、冬のあたたかな日に、作者は土中からひょっこり出て きた「ひき(ヒキガエル)」を見つけた。何の気なしにつかまえて、そばの川に放ってみ たら、なんと泳いだのだ。そのまま泳ぎ続けていれば、いずれ寒さで死ぬかもしれない。
けれど、冬の「ひき」が見せた思わぬ躍動に、作者は不思議なまでの生命力のあらわれを見出したのでしょう。
23日にふたご座で満月を迎える今週は、あなたもまた自分の中にそんな「冬のひき」を見出すつもりで、井の外へと躍り出していくべし。
心を虚しく思い出す
「多くの歴史家が、一種の動物に止まるのは、頭を記憶で一杯にしているので、心を虚し く思ひ出す事が出来ないからではあるまいか」
という小林秀雄の言葉を借りれば、今週のふたご座の人たちはまさに心を虚しくして、ただ自分にとってかけがえのない記憶を思い出していくことができるかどうかが問われているのでしょう。
消えてなくなったら寂しい、思い出せたら嬉しい、そんな当たり前の感情を、私たちはつまらない意地や屁理屈で台無しにしてしまいます。先の言葉の前に、小林は次の一文を添えています。
「思ひ出が、僕等を一種の動物である事から救ふのだ。記憶するだけではいけないのだら う。思ひ出さなくてはいけないのだらう。」(『無常という事』)
今週あなたは、何を思い出すのでしょうか? 想起されてくるものを、しっかりと胸に刻ん でいきましょう。
今週のキーワード
純粋想起