ふたご座
不良品ならではの味を出す
辺境×少年
今週のふたご座は、『ハックルベリー・フィンの冒険』のごとし。すなわち、自分の真の居場所を求めて四苦八苦していくような星回り。
マーク・トゥウェインによって1885年に発表され、『トム・ソーヤー』の続編として知られてるこの小説は、その実、どこか通りいっぺんの反抗に終始した前作トムよりもよっぽどきちんと主人公が“不良”している小説です。
主人公の八区(ハック)は、アルコール中毒の父親と暮らす、母親のいない怠惰な幼い放浪者。
ある日大金を手にした八区は、父親の元から脱出し、黒人奴隷のジムと出会い、2人は自由を求めて文明世界を捨てて、オハイオ川を北へと向かっていきます。
つまり、ここで不良とは「辺境×少年」に徹することであり、「中心×大人」から物理的にも精神的にも遠ざかり、批判を加え、それとは異なる世界を見出していく力を持つことを指している訳です。
実は作者のトウェインもその意味で他ならぬ不良でした。
彼はミシシッピ河畔の町に育ちつつも12歳で父親を失い、学業を断念したのちは印刷工となって各地を転々とし、河口都市ニューオリンズまで出て理想のエル・ドラド(黄金郷)だと聞いたブラジルを目指すものの、そこにはブラジル行きの舩がなく、結局ミシシッピの水先案内人になった。
同様に、いて座が木星に入った今のあなたもまたそうした遍歴の時代にあり、これまでの12年のサイクル(木星の公転周期)の終わりと新たなサイクルの始まりのはざまにあるのだということを、今週は改めて胸に刻んでいくといいでしょう。
脆弱さのうちに去来するもの
ここで注目しておきたいのは、「うつろい」の感覚。
これは「ウツ(空)」という言葉を語幹として生まれた言葉で、空疎な状態になにかがやってきて移っていくことを言う。
ついでに言えば、そこでは「移る」だけでなく「写り」や「映り」も起こっており、その情報の相入相関のなかで、「うつつ(現)」が微妙に移り変わっていく。
フラジャイルな情報を遮断しないでいるというのは、そういう移り変わりの中で、自分もまた変わっていっていってしまうということでもあります。
時のうつろいとともに自分もうつろい、そこで生じるゆがみやほころびを味わい愛でていく。
そこでは、生きることは生まれ変わることに他ならない。そのきっかけを、今このタイミングで少しでもつかんでいけるといいのですが。
今週のキーワード
遍歴時代