やぎ座
間と響きを整える
スパっとはさみを入れていく
今週のやぎ座は、『数へ日のどこに床屋を入れようか』(仁平勝)という句のごとし。あるいは、どこか懐かしく、小気味いい響きを取り入れていくような星回り。
季語は「数へ日」で、年内の残る日数が指で数えるほどになってきたことを、感慨を込めて言うときに使う言葉。こうした、今ではあまり使わなくなった言葉の何気ない使い方が光る一句。
カレンダーを眺めながら、さて年内のどこに床屋に行くタイミングを入れようかと思案する。詠まれている内容としては、ただそれだけのことなのですが、慌ただしさの増す年末ながら、新しい年はきちんと髪を切ってから迎えるものだとするその古風さに触れると、ますます世知辛くなってきている世の中への反動からか、どこか救われたような気持ちにさえなります。
それに、「床屋を入れる」というくだけた言い方がじつに小気味がいい。何かにつけ回りくどくなりがちな言葉のまとまりを、あっさりと言い下してくれているところなどは、まさに伸びきった髪にスパっとはさみを入れてもらうよう。
12月30日にやぎ座から数えて「ひとつの終わり」を意味する4番目のおひつじ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、掲句に詠まれたような「床屋」のような場に、みずから足を運んでみるといいでしょう。
間を空ける
内面に沈黙をつくりだし、いっさいの欲望、いっさいの意見に口をつぐませ、愛をこめ、たましいのすべてをあげ、言葉にはださずに、「みこころの行われますように」と思いをつくすとき、次にこれこそどうしてもしなければならぬことだと、あやふやさの一点もなく感じられることがあったら、(もしかすると、ある点では、これも思い違いかもしれないのだが……)それこそ、神のみこころである。(『重力と恩寵』、シモーヌ・ヴェイユ、田辺保訳)
人間が神のみこころそのものを完全に知ることなどは決してできませんが、祈りにおいて個別的な事柄や思惑を頭の中から祓われていくということは、そう珍しいことではありません。
少なくとも、どんな行動、あるいは態度を選択していくべきかをはっきりさせていくことは慌ただしい日常の中でだってできるはず。ヴェイユの言うようにじっと目をこらして、観察し、自分に問いかけることを怠らなければ。
その意味で、年を越す前に「床屋を入れる」ということも、ひとつの問いかけであり、祈りに他ならないのだと言えます。そしてそうしたささやかな祈りを、改めて取り戻していくことが、今週のやぎ座のテーマであるのではないでしょうか。
やぎ座の今週のキーワード
こんがらがった意味のかたまりを裁断していく