やぎ座
生命的であるということ
リズムの流れに乗っていく
今週のやぎ座は、食べることの「動的平衡」のごとし。あるいは、物理法則を先回り的に捉えて、分解と再構築に励んでいこうとするような星回り。
私たちはなぜだか明日も明後日も明々後日も同じ身体をもって自己同一性を保ち続けることができるものと信じきっていますが、少なくとも物質的には1年も経てば、私を構成していた物質はまるきり入れ替わり、まったくの別人になってしまいます。
分子生物学者の福岡伸一は、このことを「生命は絶え間ない分子と原子の流れの中に、危ういバランスとしてある(=動的平衡)」と表現していますが、この流れを作り出すためには「作る以上に壊すことが必要」で、「それゆえ細胞は一心不乱に物質を分解している」のだという重要な指摘をしています。
例えば、私たちは何気なく食べ物とは自動車にとってのガソリンと同じ“エネルギー源”だとイメージしていますが、この動的平衡の視点に立てば、実はそうではないということになります。確かに食べ物はエネルギー源として燃やされる部分もあるが(主に炭水化物)、タンパク質は違う。私たちが日々、タンパク質を摂取しなければならないのは、身体を作り直すためなのです。
すなわち、食べるという営みは不動のAという個体にエネルギーを与えるばかりでなく、むしろAが非Aへと変化しながらAであることを保つことに他ならない。そしてそれは、ともすれば非AになることでAでなくなってしまう可能性をつねに孕んでいるという意味で、思っている以上に非常に危険な行為なのだと言えます。
その意味で、12月8日にやぎ座から数えて「果たすべき務め」を意味する6番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、うまく未来を捉えつつ、現在において分解と再構築のリズムの流れに乗っていくべし。
あえて不安定さをつくり出す
私たちがタンパク質を摂取する前に「私が私である」ことを崩してしまうのは、いわゆるエントロピー増大の法則による乱雑さです。
そもそもエントロピーとは「混沌」の意で、宇宙の大原則として、あらゆる秩序あるものごとは時間の経過とともにカオティックに混乱していき、一点に集まったエネルギーもやがては分散していく。つまり、どれだけ整理整頓した机も散らかるし、いくら綺麗にまとめたキャリアや人生プランも少なからず破綻していくものなのだと。んなエントロピーの増大に絶え間なく抵抗しているのが、すべての細胞を入れ替え続けることで死を免れて「生きて」いる人体であり、生命の働きなのだと言えます。
これは人生レベルに置き換えれば、基本的にはエントロピーに従って老化や衰え、限界や死などを受け入れつつも、下手に落ち着き過ぎることなく、ときどき羽目を外し無茶をして、強さや若さ、しぶとさやみずみずしさを湛えた自分へと生まれ変わるためのチャレンジをしていくということでもあるのではないでしょうか。
そしておそらく、そうしたチャレンジというのは、やがては必ず死が訪れ、宇宙の塵となっていく予感を身近に感じている人ほど可能になっていくはず。
やぎ座の今週のキーワード
同一性ではなく、変形と流れのなかでその都度自分を捉え直していくこと