やぎ座
陰徳の士
偉大なる無名性の現われ
今週のやぎ座は、『姓名は何子(なにし)か案山子(かかし)哉』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、ひたすら黙々と何かに打ち込んでいくような星回り。
秋空が見事に晴れ渡った行楽日和に、郊外に足を運んでいたときに作られた一句。あちこちにたたずむ案山子にふれて、改めて彼らの在り方に目を開かされたのでしょう。
富や名声を望むことなく、貧しく卑しい身分に甘んじつつ、ただ人さまのために田を守ろうと、雨にも負けず風にも負けず毎日休むことなく立ち続けている姿に、これ以上の陰徳の士はないと感慨を深くしたのかも知れません。
本来であれば姓は何々、名はなにがし、また字(成人がもった実名以外の名)は何と、それぞれ細かな詳細を持っているはずですが、人はただ「案山子」という一般名詞でばかり呼んでいる。それでも、「別によかろう」とひたすら押し黙ったままなのが、またおかしいじゃないかと。
「哉」は疑いの意を含んでいますから、おそらくそんな自分の感慨が、容易に周囲に受け入れられるものではないだろうと感じていたのだと思いますが、それは現代でも変わらないか、より一層少なくなっているのではないでしょうか。
その意味で、10月3日に自分自身の星座であるやぎ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたにおいては、作者が感動した「案山子」の在り方をこそ自身のロールモデルとしていくべし。
「やらない」文化
「意識高い系」と呼ばれる、例えばある種のオンラインサロンにたむろするような人たちにとって、実際にやっていることの中身やその質よりも、「何かやっている雰囲気」というのがとにかく大切なのではないでしょうか。
大抵、彼らは自身の取り組みにきわめて“真剣”であるがゆえに、それがどんな反応に迎えられるか、いかに評価されるかという方向に意識が縛られがちですが、ただ、そうした「なにかやってやる(からそれを好意的に受け入れてほしい)」という文化に対置されるものとして、「やらない」文化というのもあるわけです。
例えば、やたらと“仲間”を募ってよく理解できない者までも巻込んだりしない、とか、自分は世間の常識や権力側に対するカウンターパートなのだといった過度な意識は捨てる、とか。ましてや、業界だとか地元だとか日本だとか、とにかく大袈裟な対象をあげてそれに自分は貢献するのだといった思い上がりは持たない、とか。
その意味で今週のやぎ座もまた、自身のやっていることの水準を保っていくためにもそうした「やらない」文化をこそ大切にしていきたいところです。
やぎ座の今週のキーワード
はしゃがずにだまってやろうよすきなこと