やぎ座
強さの呪縛
弱いからこそ
今週のやぎ座は、身から出たフツーのごとし。あるいは、弱くていいじゃんと、自分をやさしく諭していくような星回り。
人を蹴落とせば孤独になる。そんな簡単なことも、実際に経験してみないとなかなか分からないものです。特に若いころは、とっとと何か目立った業績をあげたり、いつも何かに怒ってみせることで、自分の価値があがったような気になるものだし、それで中途半端に成功してしまったりすると、かえって後に引けなくなって、あっという間に中年になっていたりする。
でも思うように成功が続かず、活躍する場がなくなったり、仕事そのものが来なくなったりして、狼狽したり絶望したりしていると、ある日ふいに人間エキセントリックである必要も、どこにもない個性を光らせている必要も本当はないんだ、と気付くわけです。
弱い自分というのもいいのではないかと。国でも人でも、強い者というのは結局まわりに迷惑をかけますから。競争社会では、みな他人のことなど構わなくなり、弱い者から切り捨てられがちですが、弱いからこそ、誰かのことを真剣に思うことができるし、孤独から逃れられ、気持ちも豊かになるのかも知れません。
12月4日にやぎ座から数えて「自己浄化」を意味する12番目の星座であるいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、強さの呪縛から自分を改めて解き放っていきたいところ。
震える弱いアンテナ
「フツー」という言葉を捉え直す意味で、折に触れて紹介してきた茨城のり子さんの「汲む―Y・Yに」という詩を、ここで改めて一部引用しておきたいと思います。
初々しさが大切なの
人に対しても世の中に対しても
人を人とも思わなくなったとき
堕落が始るのね 墜ちてゆくのを
隠そうとしても 隠せなかった人を何人も見ました
私はどきんとし
そして深く悟りました
大人になってもどぎまぎしたっていいんだな
ぎこちない挨拶 醜く赤くなる
失語症 なめらかでないしぐさ
子供の悪態にさえ傷ついてしまう
頼りない生牡蠣のような感受性
それらを鍛える必要は少しもなかったのだな
年老いても咲きたての薔薇 柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事 すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
やぎ座の今週のキーワード
生牡蠣のような感受性