やぎ座
制限と爆発
モネのまなざし
今週のやぎ座は、失明したモネのごとし。あるいは、エモが溢れ出していくような星回り。
20世紀を代表するフランス印象派の画家で、「睡蓮」などの代表作で知られたモネは、その最晩年に、白内障になって、ほとんど眼が見えなくなったそうです。
ところが、眼が不自由になってからの彼の作品は凄まじく、それは苦悩に満ちているというより、むしろ歓喜に満ちた画面が表出していったのです。
色とりどりの色彩が視神経に直接入り込んでくるかのような「バラの小径」もその頃の作で、これは眼を失ったモネが、写るかすかな光のその奥に突進するように、無我夢中にキャンバスに向かっていった姿勢がそのまま出ている作品です。
こうした絵の前に立つと、直接モネの感情がこちらの感情を刺激し、魂に振動を呼び起こすように感じられるのですが、そこにはやはり失明の影響が大きかったように思います。
19日にやぎ座から数えて「再起動」を意味する5番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ある種の「魂の再起動」を促すようなきっかけを得ていきやすいでしょう。
子規のまなざし
「魂の再起動」ということで思い出されるのは、やはり晩年の正岡子規です。カリエスという病気を患って長年病床に臥していた彼は、やむにやまれぬ事情で空間が非常に狭まっていった結果、その限られた空間をものすごく繊細に描写し始めるだけでなく、何度も体から抜け出して、狭い庭を見下ろしていく幽体離脱のような体験を重ねていき、ついには自分の死体まで風景の一部として詠んでしまうところまで行き着いたのです。
鶏頭の 十四五本も ありぬべし
鶏頭は秋に細かい花を咲かせる植物で、公園や庭先などによく観賞用に植えられていますが、それが14、5本も「ありぬべし」すなわち、きっとあるに違いない、という意味ですが、どこかその生き生きと咲き乱れている花の赤と、まさに生命が燃え尽きようと喀血している間際に手に受けとられた血の赤を対比的に詠んでいるようにも感じるし、この句がそのまま天への問いかけのようにも思えてきます。
子規のように意識が極限まで冴えわたった状態を維持するのは常人にはなかなか難しいですが、今週のやぎ座ならば、あるいはそれに近い状態へと自分を持っていけるかもしれません。
やぎ座の今週のキーワード
目が見えなくなった方が絵は深まるし、見れるものが少なくなった方が物事を深く詠める