やぎ座
生きることに素直
野暮はやめて
今週のやぎ座は、映画「独立愚連隊」の冒頭シーンのごとし。あるいは、起こるべくして起こった必要なことを素直に受け入れていこうとするような星回り。
この映画は、日中戦争も終わりに近い北支戦線が舞台となった戦争映画で、主人公である軍曹が、馬賊や国民党軍や八路軍(華北地方に展開していた中国共産党直系の部隊)などの色々な戦力が行き交うところをひとりで馬で旅をしているところから始まります。
それで、同行した日本兵が「ひとりで旅して怖くないですか」と訊くと、「危険なことが近づくと、手のひらがムズムズしてくるんです」と笑ったあと、「そしたら一目散に逃げ出す」と言うんです。
今いるところから一目散に逃げ出すとか、少なくとも進むルートを変えるとか。これは映画のワンシーンではあるんですが、そういうことで命が助かったということが、実際にたくさんあったのではないかと思います。
それは生き死にがかかっていたから出来たことでもある訳ですが、逆に現代人のように「エビデンスは?」なんて言ってふんぞり返るような野暮なことを言う人なんて戦場にはいなかったのではないでしょうか。
9月23日にやぎ座から数えて「ひとつの終わり」を意味する10番目のてんびん座へ太陽が移る秋分を迎えていく今週のあなたもまた、今後の自分が進んでいく方向性について、何らかの大きな決断が促されていきやすいはず。
「ぎなのこるがふのよかと(生き残ったのが運のいい奴)」
この言葉は、社会の底辺に革命の起点を求めて独自の運動を展開していった詩人思想家・谷川雁の「革命」という詩の最後の一行です。
作者は自分のことを革命家だと思っていたのでしょう。けれど、その意味するところが普通と少し違っていた。つまり彼が思い描いていたのは、社会的有機体の発展には違いないけれど、それは分かりやすい進歩の図というより、有機物の死滅の相を含んだものであり、どこかかなしいを噛みしめるようなものだったのでしょう。
彼は間違っても、公平無私こそ革命家だとか、未来は必ず良くなるんだとか、そういういい加減なことばかり言っている輩とは一線を画した人物でした。
死んでしまったら、それは仕方ない。転向してしまったら、それも仕方ない。生き残ったのが運のいい奴。これは自分自身への皮肉でもあったに違いありません。
今週のやぎ座もまた、そんな自分自身への皮肉をかなしさで包みながら、それでも生き続けていく意志を絞り出していくことでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
生き残ったのが運のいい奴