やぎ座
振動とその伝播
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
トランジットな情景
今週のやぎ座は、「バナナチップス堅し空港がらんだう」(村越敦)という句のごとし。あるいは、リアリティのオルタナティブが到来してくるような星回り。
カリカリにスライスされたバナナチップスは南国の味ですが、「堅し空港」と続くと途端にそこに肉体的および社会的なリアリティが加わって、「めんどくさそーだなー」と一瞬思ってしまったところに「がらんどう」で面食らい、呆然とする一句。
空港は地を這うように地続きな私たちの日常的リアリティをぱっきり切断し、遠くへ繋がっていくためのハブともなりますが、さしあたりの体感としてもやはり「がらんどう」なのでしょう。
つまり、掲句の「がらんどう」とは、実際に空港に人がほとんどいないのではなく(現在の状況ではむしろこちらが現実的かもしれないが)、体感としていったん“からっぽ”になって、生まれ変わっていくということなのかなと。
なんて言うと断食合宿かよって話ですが、私たちの中で決定的に何かが変わってしまう時というのも、何気なくバナナチップスを食べていて、その乾いた響きが内臓や骨を震わせた時だったりするのかも知れません。
16日にやぎ座から数えて「少し先の未来」を意味する11番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、不意にリアリティが入れ替わっていくような実感が湧いてくるはず。
「ふよふよ」というオノマトペ
オノマトペは、時にどんなに工夫をこらした言葉よりも、「よく分からないけどなんか分かる」といったすとんと腑に落ちる感覚や、言葉が直接染み込んでくる感覚を引き起こしていくことがあります。
中でも、風が草木を微かにそよがせる時の「そよそよ」とも、筋肉と何ら連動しない柔らかい肉が震えながら、その震えだけを波紋のように広げていく「ぷよぷよ」ともどこか異なる「ふよふよ」という言葉は、今のやぎ座をまさに象徴しているように思います。
ふよふよとは、例えばほとんど重さというものを欠いた小さな羽虫が微細に揺れ動くときの擬音語であり、はかなくて脆弱で、思わず後ずさりするような異質を秘めた、未知の振動体を予感させますが、おそらくそれに続く行動には戦略性や駆け引きといったものはほとんど含まれないでしょう。
それと同様、今週のやぎ座もまた、自分でも不可解な名状しがたい消息を求めて、ふよふよと世に対していきたいところです。
やぎ座の今週のキーワード
透明な微細力をもって大勢の論理を超越していくこと