やぎ座
月下の石二つ
不自然さのない距離感
今週のやぎ座は、「月下の石二つ相呼びゐて触れず」(鷲谷七菜子)という句のごとし。あるいは、近いようで遠く、遠いようで近い。そんな距離感を味わっていくような星回り。
この「石二つ」とは、「人ふたり」の隠喩とも読めますが、互いに相手を求めていながら、距離を縮められない皮肉と哀しみとが、「月下」という状況下でより一層印象的な一句。
しかしそれは隠された真実を暴き立てられたというセンセーショナルなニュアンスというよりも、言わずにしまっておいたホンネがそっと浮かび上がってきたと言うような、素朴でありふれた光景であるように思います。
例えば、晩酌の流れの中での
「粉ものって本当は苦手なんだ」
「そう」
というくらいの、夫婦の何気ないやり取り。近づいたことが嬉しいのではなくて、それまで隠れていたちょっとした距離感が見つかったことへの納得感に安心するという感覚の方がいまのやぎ座にはちょうどいいのではないでしょうか。
10月1月から2日にかけて、やぎ座から数えて「裸になること」を意味する4番目のおひつじ座で特別な満月を迎えていく今週のあなたもまた、何事につけきれいにまとめてしまうのではなく、不自然さのないことへの落ち着きを味わっていくことがテーマになっていきそうです。
男女を超えて
かつて寺山修司は「人は恋愛を夢みるが、友情は夢みることはない。夢を見るのは肉体であるから。」(『時代の射手』)と書きましたが、肉体よりも精神がまさりがちなやぎ座にとって、夢をみるのはやはり肉体ではなく精神の方でしょう。
そう、やぎ座にとって本来より自然と求めていきやすい関係というのは男女の縛りを伴ない、従ってその本質上決して長続きすることのない恋愛というよりは、男女という次元を超え、純粋に人と人として信用し合えるような友情に近いのではないでしょうか。
例えば、『紅の豚』のポルコとジーナはちょうどそんな関係の一例と言えるかも知れません。パートナーと呼ぶにはどこかまだ青臭くて、恋人と呼ぶにはなんだかさっぱりしている。
もしそっと身の周りを見渡して、そんな風に付き合っていける相手と巡りあえているのなら、その幸運にひっそり静かに浸っていくこと。逆に、まだそういう相手がいないのならば、まずそういう関係をできるだけリアルに自分の生活の中で思い描いてみるといいでしょう。
今週のキーワード
センセイの鞄