やぎ座
しなやかに根を張ること
人間と植物のアナロジー
今週のやぎ座は、さながら「天空の植物」のごとし。あるいは、根を天に向けて伸ばしていくような星回り。
古代ギリシャの哲学者プラトンは、人間の頭、つまり理性を植物の「根」に喩え、人間を「地面のではなく、天空の植物」であり、根を中空に向けた、さかさまな植物なのだと書き記しました。
さらにそれに続いて近代合理主義の起源でもあるアリストテレスもまた、「動物において頭にあたる部分は、植物では根にあたる」として、人間と植物のアナロジーを基礎づけたのです。
通常、植物における根は地中に隠れており、生存に必要な水分と栄養を周囲の環境から取り入れることで、自身と周囲の環境との共生関係を作り出している。つまり、堅牢な土壌の中に張りめぐらされた根を行き交うのは単なる物質にとどまらず、互いの関係性を決定づける有機体情報やリスクにまで及んでいくのです。
植物はその環境から自分の利得だけをかすめ取ることを決してよしとはしません。表に見せている姿とはまったく異なる、意外な形状の根をアンテナのように環境へと積極的に伸ばしていくことによって、自身を宇宙的な仲介役にしようとしていくのだと言えます。
果たして、そのような植物的な在り方、特に「根」をめぐる環境との関わり方をどれだけ人間は実現できるのでしょうか。
10日にやぎ座から数えて「生きて在ることの根本」を意味する4番目のおひつじ座で火星が逆行に転じていく今週のあなたもまた、改めてどのような「共同体」を自分がデザインしていきたいのか、ということを改めて考え、とっかかりを掴んでいきたいところです。
マラルメにおける美の原理
19世紀後半のフランスの詩人マラルメは、こんなことを言っています。「ものはすでに存在しているから、われわれはものを創造する必要はない。だからわれわれはものの関係だけをつかむ必要があるだけだ。それで詩もオーケストラもみなものの関係がつくり出す子供である」と。
ものとものとの新しい関係とは、今まで結びつけられてこなかったもの同士が結合するということであり、それは例えば二つの相反するものの結合だったり、遠くかけ離れたものを連結することで、そうした結びつきこそ、マラルメにとってすぐれた美の原理であると考えられていた訳です。
例えば、テレビであるお店のおいしそうな看板メニューが紹介されているのを見て、ただ「おいしそうだな」と思うだけで、すぐにまた画面に流れてきた次のメニューに関心を移していけば、それは情報をただ一方的に受け取るだけのきわめて受動的な結びつきであり、新しい風景は立ち上がってこなかったでしょう。そうせずに、あえてテレビを消して実際にお店に行ってみるとか、自作を試みてみるからこそ自然とまなざしがデザインされ、これまで見えていなかったものが見えるようになってくるのであり、それは人間としての「根」を周囲の世界に伸ばしていくということに繋がってくるように思います。
今週はそんな風に詩をつくるように根を伸ばし、根を張り巡らすように詩を作ることで、自分と世界との新しい関係をデザインされてみてはいかがでしょうか。
今週のキーワード
新たな風景を立ち上げるための補助線としての「根」