やぎ座
あいまいな領域の動きに敏感になること
もっとつながりを作るための言葉
今週のやぎ座は、「夕方的な言葉」のごとし。あるいは、ネットワーカーとして限定的な常識や固定観念をやすやすと超えていくような星回り。
プレゼンやディベートなど、主にビジネス界隈を中心に「はっきりと分かりやすく」訴えたい内容を訴え伝えていくべしという考え方が取り入れられるようになって既に久しいですが、そこではあいまいな言葉やメッセージ力のない弱い言葉がもれなく非難の的ともなってきました。
例えば、だいたい、そのうち、適当、いつしか、しだいに、雰囲気、気配、塩梅、大筋、具合、加減、いろいろ、そんなところ、ひとまず、一応、まずまずetc.
松岡正剛はこうした日本語の言葉を「夕方的な言葉」と呼びました。夕闇が人びとの輪郭や景色との境界線を溶かしていくトワイライト・ゾーンのように、あいまいな領域やあいまいな動向に反応するための言葉をそう呼んで、断固として擁護したのです。
それは縁と縁、情報と情報、心と心の「つながり」というのが、必ず弱くあわく重なりあっているような場所で成立するものだから。すぐさま否定形が用意される「成功」や「勝ち組」などの強い概念や言葉ではなく、「ぼちぼち」や「まずまず」などの弱くあいまいな状態を通してネットワークの新たな展開は生じるのであり、それは「このへん」や「あのあたり」といったそれ以外の言い方では指し示せない領域で成立する訳です。
その意味で、これで行けば間違いないといったような勝ちパターンや確実なパースペクティブがことごとく崩壊しつつあるような現代社会では、多様でケースバイケースな「夕方的な言葉」の重要性がますます増しているのではないでしょうか。
27日にやぎ座から数えて「中長期的な視点やビジョン」を意味する11番目のさそり座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした問題解決のためのアプローチや視点の大胆な変更を試みていくことがテーマとなっていきそうです。
まだ名前のついていない仕事に目を向ける
主婦の家事労働など、市場経済において産業サービスとして見なされておらず、適切な報酬で売買されていない生産行為を、イヴァン・イリイチは「シャドウ・ワーク」と呼びましたが、世の中にはそうした「名前のついていない仕事」がゴロゴロ転がっています。
イリイチによれば、学校の中の生徒、病院における患者、交通機関における通勤・通学者もまた、シャドウ・ワークの担い手であり、こうした視点を通すと、労働や仕事に関する既存の慣習がいかに柔軟性を欠き、硬直しているかを思い知らされますが、それを言葉のレベルで言ったのが先ほどの「夕方的な言葉」であった訳です。
とりあえずまずは、そうしたまだまだ正当な評価や十分な活用シーンが与えられていない人間生活を支えるサブシステムを、いかに自分の身の周りに見出し、かつ実践していけるかということを、今週は意識していくといいでしょう。
今週のキーワード
シャドウ・ワーク