やぎ座
歴史と現在を接続する
人間は「永遠の人」たりえる
今週のやぎ座は、『代表的日本人』を書いた内村鑑三のごとし。あるいは、歴史と現在とを重ね合わせていくような星回り。
最近の批評は、過去や未来について考える傾向が強いように思いますが、それがなぜかと言えば、端的に言って言葉というのは粗野な現実=現在に簡単に負けてしまうからでしょう。
しかし、冒頭の書の原型である『日本及び日本人』を1894年に発表した内村鑑三の態度は真逆でした。
内村は、西洋文明を追いかける明治以降の日本において、日本人がどういきるべきかを、この本において5人の実在の人物を取り上げ、彼らに語らせることで示そうとした訳ですが、その最初の章に出てくる西郷隆盛を朽ちることのないスター、すなわち永遠の世界の者として語っていたのです。
内村は、永遠と今現在とが、既に重なり合っている実感を強烈に抱いていたのでしょう。
22日(日)に太陽がやぎ座入りして冬至を迎えていく今週のあなたもまた、ただならぬ霊感が「今」によみがえってくる実感を深めていきたいところです。
「天」に即しているか否か
『代表的日本人』の鍵となる言葉は「天」であり、これは「世界霊魂(World-Spirit)」と訳されている人間を超えた働きの別名でもあるのですが、内村はこの「天」と西郷との関わりについて次のように述べていました。
「静寂な杉林のなかで「静かなる細い声」が、自国と世界のために豊かな結果をもたらす使命を帯びて西郷の地上に遣わせられたことを、しきりと囁くことがあったのであります。そのような「天」の声の訪れがなかったなら、どうして西郷の文章や会話のなかで、あれほどしきりに「天」のことが語られたのでありましょうか。のろまで無口で無邪気な西郷は、自分の内なる心の世界に籠りがちでありましたが、そこに自己と全宇宙にまさる「存在」を見いだし、それとのひそかな会話を交わしていたのだと信じます。」
西郷は、大いなるものに開かれた霊性的人間であり、内村はほとんどイザヤやエリヤなど旧約聖書に出てくる預言者に近い存在として西郷を捉えていたことがよく分かります。
つまり、彼が理解した宗教の本質をひとつの尺度として物事の歴史性をはかり、現在と歴史を接続するための彼なりの方法論として練り上げていったのだとも言えるかも知れません。
内村ほどではないにせよ、言葉をこえたところで信じられる自分なりの尺度とは何かということも意識していきたいところです。
今週のキーワード
則天去私