やぎ座
世界を底から掬いあげる
蕪村の挑戦
今週のやぎ座は、「秋風や酒肆に詩うたふ漁者樵者」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、そこから逃避するものとしてではなく、あくまでそこへと帰っていくものとして「現実」を見ていこうとするような星回り。
「しゅうふうや/しゅしにしうたう/ぎょしゃしょうしゃ」と読みます。これは普通は「秋風(あきかぜ)」と読ませるところを、音読みの漢文調にしてわざと引き立たせていて、「漁者樵者」つまり漁師や木こりたちのことをあえて高貴な風に詠んでいるんですね。
「酒肆」は酒屋のことで、労働者の集まる店ですから、今でいう場末の安居酒屋です。そこに秋風が吹いていて、侘しげな光景なのですが、その中で彼らが一日の疲れを忘れようと酒を酌み交わしながら歌うその歌を、作者はあえて格調高く「詩(し)」と言ってみせる。
つまり、一番虐げられている社会の底流の庶民たちの姿を、もっとも高貴で尊いものとして伝えようとしている訳です。そうして、現実から目を背けるのではなく、あえてそこに目を向けつつ、時代の空気に流されず、普遍的な価値を問おうとしたのでしょう。
14日(月)早朝に迎える、やぎ座から数えて「立ち返るべき基本」を意味する4番目のおひつじ座満月からスタートしていく今週は、そうした蕪村の姿勢にも重なるやぎ座らしい社会や家族への姿勢や原点を再確認していくことになるはずです。
ずっとそこにあった光景
少なくとも今週はごくふつうの物事や、ずっと身近にあった光景のような、ありふれた日常の中にこそ、インスピレーションや情熱の源泉は潜んでいるのだということを意識していくことになりそうです。
そもそも、もっともらしい題材を、美しい言葉や華やかなデザインで飾り立てるのは、決してやぎ座の真骨頂ではないはず。
自分の暮らしを支えてくれている存在の目立たずささやかな貢献に目を向けて、いかにその‟縁の下の力持ち”を助けていけるかということを、自分なりのやり方で模索していくこと。
それこそが、今週のあなたに与えられた課題なのだと言えます。
今週のキーワード
底流と普遍