やぎ座
ものの見方のズレを楽しむ
鮮やかなる異化
今週のやぎ座は、「葉ざくらの中の無数の空さわぐ」(篠原梵)という句のごとし。あるいは、平凡な出来事やありきたりなパターンの中に、いつもとは違う輝きを見出していくような星回り。
5月になると、桜の木も花を咲かせていた頃のはかない風情から、青葉若葉の生命力をみなぎらせる力強い姿へと鮮やかに変貌していきます。それでも普通の感覚だと、なんとなく葉っぱが光ってきれいだなで終わってしまう場合がほとんどなのではないでしょうか。
その点、掲句はものの見方や切り取り方が普通とはすこし違っています。風でそよいだ桜の木を見上げた際に、そのすき間をじっと見つめ、そこに「無数の空」が「さわぐ」姿がありありと見えてくるまで心を留め続けた。
本来はひとつであるはずの空が、木陰に分断されることで生まれた小さな青空がまるで生き物のようにさわいでいる。
句中で畳みかけるように3度も連続して使われている「の」のリズムによって演出されたそうした光景は、ひとつのアニメーションであり、そこには文字通りアニミズムが息づいている。
そういう意味では、「ものの見方」というのはやはり修練によって大きく変わっていくものであり、掲句などはその賜物と言えるでしょう。
やぎ座の守護星である土星と「感性の星」である金星が鋭い角度を形成していく今週は、いつもとは少し違う仕方で感性を働かせていくよう意識してみるといいでしょう。
「ヘウレーカ!」
ものの見方を変えたりずらしたりしていくということは、ある種の直観的な指差しであり、長く手の込んだ文章を書いていくような作業とはまったく異なります。
それはいわば禅の悟りのようなもので、「無意識」を意識するということでもありますし、あるいはアルキメデスがアルキメデスの原理を発見した際に叫んだとされる「ヘウレーカ(わかった)!」という言葉に通じるものでもあります。
観念に訴えようとすれば、永遠にその新鮮味と生命力が失われてしまうような思いつきや着想、腑に落ちる感覚。
そういうある種の偶発的なカタストロフィーによって起きた割れや亀裂の方へと、今週はさながら「蛙」にでもなったつもりで飛び込んでみるといいでしょう。
今週のキーワード
自我の解体作業