やぎ座
相克と過剰
野生的豊穣の目覚め
今週のやぎ座は、さながらトルストイが理想とした日本の農夫のごとし。あるいは、みずからの内なる自然的人間性を大胆にも肯定し、乗っかっていくような星回り。
少しでも文化的な人間にとって、トルストイの『コサック』に登場するエローシカ叔父が言うような「自然と一つに成ること」がどれほど困難なことであり、またその体験がどれほど思いがけない体験であるかは、想像ができないかもしれません。
それほどに、人間における自然性と自意識の矛盾は根源的なものであり、誰にも解決できない問題なのですが、その一方でトルストイという文学史上に限らず歴史上稀に見るじつに不思議な人物は、一個の完全な自然人の姿を体現していました。
彼は老境枯淡の域に入ってなお、ますます異常な生命力を示し、若い人たちと一緒に畑仕事をしたり、一日中テニスをしたり、ついには数十キロもの自転車旅行へまで出かけて暴れまわっていたのです。
彼は、近代的人間の根源的病いとも考えられている自意識過剰の極めた人間でしたが、その一方でなまなましい生命の樹液のような粘っこさ、息をつくのも苦しいほどの野生的豊穣を根底に湛えることのできた人間だったのです。
彼ほどにとは言いませんが、やはり自意識過剰の性質を備えるやぎ座のあなたもまた、今週は思い切って意識の光さえも届かないような本源的生命の底なし沼へと足を沈めてみてはいかがでしょうか。
大猿になる
例えば、『ドラゴンボール』に登場してくる戦闘民族サイヤ人には大きく2つの変身形態がありますが、これはある意味でトルストイにおける極端な意識性と自然性とを分かりやすくしたものとも言えるかもしれません。
スーパーサイヤ人化では、膨大なパワーを扱いながら人間らしい感情を捨てて、徹底的に合理的に状況をコントロールしていきますが、なんだかその作られたクールさみたいなものが鼻につきますし、どこか無理をしているようにも感じられます。
一方の大ザル化は、月の光を使ってナチュラルに戦闘力=性エネルギーを爆発させ、理性を眠らせてただただ内なる野生や本能を躍動させていきます。
確かに迷惑をかけるような状況も出てくるかもしれませんが、余計な副作用や後遺症もありませんし、「死ぬ―草が生える、それだけのことさ」と言わんばかりの素朴さはまさにロシアの自然児トルストイそのもののようにも思えます。
今週はそんな素朴で自然児になったつもりでぜひとも暴れまわっていきたいところ。
今週のキーワード
「自然と一つに成ること」