かに座
命の手触り
エロースと自然体
今週のかに座は、「鼈のくびきる夏のうす刃かな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、はっとするような切り込みをみずからに入れていくような星回り。
「鼈(すっぽん)のくびきる」と聞いただけで、はっとさせられますが、掲句はそれで終わらない。「夏のうす刃」とくれば、自分の首筋に刃が滑っていくような感覚さえ感じられてきて、ゾクゾクするものがある。
逆に言えば、人はそこまで感覚を重ねられなければ「命の危険」なんて感じることはできないのだ。もうこれ以上は無理だというギリギリを感じるからこそ、生気としてのエロースは自然と醸し出されてくるのです。
その線がぶれていたり、ノイズに埋没して感知できなくなってくれば、それはもう生きながら死に体と化しつつあるのだと言える。
今週は鋭利な刃をみずからに向けていくことで余計なノイズをそぎ落とし、生きものとしての自然体を取り戻していくことになるでしょう。
命は刻々と変わっていく
人が突然変わってしまったり、自分が自分でないもののようになってしまうのは、おそらく月のせいでしょう。
いつも同じ顔をして通り過ぎていく太陽と違い、見上げるごとに違う顔をしている月の存在は、昔から人類にとって変化の象徴であり、したがって哲学と宗教の起源でした。
ですがそれは、月の青さによって現われているように思います。
「月がとっても青いから~遠廻りして帰ろう~♪」という歌もありましたが、なぜだか昔から月と言えば青いと決まっているのはじつに不思議です。実際はあまり青くないんですが、これも恐らく、月という存在そのものが人間の「シャドウ(影)」の部分を刺激するからなのでしょうね。
つまり、生命のうちに宿るぞっとする感覚を過剰に引き出してしまうんです。そして、それこそが命の手触りと言えるのではないでしょうか。今週は月からの啓示を待ちつつ、静かに心の準備をしながら過ごしていくくらいで、ちょうどいいのでしょう。
今週のかに座へのキーワード
「月がとっても青いから」(菅原都々子)