かに座
タフであること
「ゼロ・トレランス」に反して
今週のかに座は、「共存」でも「寄生」でもない「共生」のごとし。あるいは、自分にとって都合の悪い存在もまた、許容していこうとするような星回り。
いま、地球上の多くの社会でますます寛容さが失われており、そうした不寛容の徹底化を象徴する言葉に、ここ数年アメリカで注目されている「ゼロ・トレランス」というものがあります。
これは押し売りや酔っぱらい、浮浪者、娼婦など市民道徳に反する行為や存在を絶対に許すことなく厳しく取り締まり、街中から逸脱者や無秩序を一掃することであり、例えば学校というコミュニティにおいては、喫煙などの校則違反行為だけでなく服装や言葉の乱れまでを対象に、それぞれ担任、生徒指導部長、教頭、校長といったレベルごとに対処を細かく決めていくというもので、こうした包摂型統制から排除型管理へという流れは世界的な傾向にあるようです。
ただその一方で、近年「共生」という言葉もまた、じつに様々な文脈で見かけるようになり、それは他者との関係に乏しく単に同じ空間を共有しているだけの「共存」や、一方だけが利益を得るような「寄生」とも違って、あくまで自分とは異なるものと「共に生きる」ことであり、条件次第では寛容さとも対立したり、原理主義には排他的でありつつも、対立や差異、多様性といったものともなんとか付き合っていこうとする態度とも言えます。
4月1日にかに座から数えて「世間への応対」を意味する10番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、世界的な時流のただ中で自分がどういう態度を取っていくべきか、まずは身近なコミュニティのなかで心に決め、実践してみるといいでしょう。
開かれた宴
「共生」の源泉のひとつに、社会思想に由来する「コンヴィヴィアリティ」という言葉があり、これは普通には「宴」という意味なのですが、イヴァン・イリイチらはそこに「開放性」「異質なものの許容」「参加者によるルールの遵守」などの含意を持たせ、より能動的な概念に変えていきました。
しかし思い返してみれば、8億年の原始の海に存在した細胞を祖先とし、多大なる時間をかけて多様化してきた生命の歴史は、弱肉強食の適者生存の単なる繰り返しというよりも、すべての生き物が共有しているゲノムDNAの展開であり、また分かち合い、そして関わり合いの物語でもあったのではないでしょうか。
昨今の社会情勢やAIの進化進出によって、人類(ヒト)はいまの種としてのたそがれ時を迎えているように思えますが、それでも壮大な系統樹の梢は春のあかるい日差しを求めて新芽をつけているはず。
今週のかに座もまた、さまざまな垣根や軋轢をこえて自分が周囲に助けられていること、逆に周囲にしてあげられることなどに目を向けてみるといいでしょう。
かに座の今週のキーワード
ヒトの可能性をひらく