かに座
役に立ったら負け
物語が、始まる。
今週のかに座は、「Please relate your dream」という言い回しのごとし。あるいは、効率性を無視してでも日々の生活をひとつの「語り」にしていこうとするような星回り。
これは河合隼雄さんがどこかで書いていた話なのですが、心理療法士などが患者さんに「夢を言ってください」というときに、「プリーズ・テル・ミー・ユア・ドリーム」という代わりに、「プリーズ・リレート・ユア・ドリーム」という言い方があるのだそうです。
「リレート」というのは「関係づける」という意味の動詞で、名詞形の「リレーション」には「関係」という意味だけでなく「物語」という意味もあります。
つまり、「プリーズ・リレート・ユア・ドリーム」というのは、ただ事務的に事実を話してくれとか、要件を手短かに伝えてくれというのとは間逆に、事実と事実とをつなぐものが出てくるように、みずからを促してみてくれとか、言葉につまったり、言い淀んだりしてもいいから、何かそこに感じるものを盛り込みながらストーリーを作ってみよう、語りに筋を通してみよう、ということなんですね。
19日にかに座から数えて「無意識の調整」を意味する12番目の星座であるふたご座で満月を迎えていくところから始まった今週のあなたもまた、そうした1人の「語り/騙り手」となったつもりでストーリーを取り戻してみるといいでしょう。
神話のかけら
例えば、「猫のしっぽ」のような存在の切れっぱし。あるいは、錆びた看板、使いかけのノート、壊れた機械の部品、音が一部飛んでるオルゴール、割れた食器、百科事典の切れはし、レンズのない天体望遠鏡、舞い上がるビニール袋、きちんとした文章になっていないけれどどこか引っかかる単語など。
それ自体では中途半端な、不完全で、些細な、不具の断片。けれど、どこかそこから物語が始まっていきそうな、全体性を欠いた部分。いや、完成された全体性よりもずっとキラキラしている魅力的な神話のかけら。
「そんなもの、いつまで持ってるの、捨ててきなさい」
「嫌だ!」
予定調和的にストーリーが完成してしまうことを断固拒否するような部分や断片には、こちらの論理を逸脱させるバイブレーションがありますし、「relate your dream」というのも、そうしたバイブレーションに身を任せてみるということでもあるのかもしれません。あなたもまた、そんな断片を手に取るところから語り/騙りを始めてみてください。
かに座の今週のキーワード
何の役にも立たないものほど神話的である