かに座
俳句も郵便も
※12月13日〜19日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。
次回は12月19日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
果てしない積み重ね
今週のかに座は、「冬山やどこまで上る郵便夫」(渡辺水巴)という句のごとし。あるいは、取り組んでいかなければならない果てしない積み重ねを遠望していくような星回り。
木も枯れ、石も冬ざれているまるで山水画のような山道を郵便夫が上がって行っている。届け先の家と言ったって、道の先にどこかに一軒か二軒かが点在しているくらいの程度であるのに、郵便夫はなおも山道を上へ上へとぐんぐん上りつつあるので、いったいどこまで上っていくのだろう、とやるせない心細げな作者の心持ちがこちらまで伝わってくるかのようです。
いくらそういう職業とは言え、わずか一つか二つの郵便を届けるために、際限もなく淋しい山道をゆくその果てしなさに、作者は同情しているのか、それとも、どこかで自分を重ねているのか。おそらくはその両方なのでしょう。
俳句も郵便も、考えてみれば単調な行為の果てしない積み重ねの上に成り立っており、それは今のかに座の人たちにもどこかで通底するのではないでしょうか。
11日にかに座から数えて「探求」を意味する9番目のうお座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、ひとつこんな郵便夫になったつもりで過ごしてみるべし。
麒麟のごとく
麒麟という聖獣について聞いたことはあるでしょうか。『説文解字』という3世紀頃の書物によれば、「龍の頭部」に「鹿の胴体」で、「頭に一角」があるとされ、さらに、「生きた虫を踏まず、生きた草を折らない。角があるのに、それで害をしないが故に聖獣」であり、麒麟は百獣の王であるが、それはライオンにように単なる弱肉強食的な強さではないとされています。
中国では古来より将来有望な大物が生まれると麒麟が現れるという言い伝えもありますが、どうも現われるだけで何もしないのです。「千尋の谷に突き落とす」とか、「キビ団子をもたせて家来を作らせる」とか、これはと見込んだのなら普通はするであろう実際的なことを何もしない。
ただ直接手を出すようなことは一切しない代わりに、まっすぐに見守り、あるかなきかのごとくに寄り添い、そしておそらくは祈っている。それはどこか、山道をどこまでも行く郵便夫に対する作者の在り様に重なるように思います。
今週のかに座のあなたもまた、「手を出す」以外の仕方で、自分自身を含めた誰か何かに意識を傾けていくことができるかが問われていくでしょう。
かに座の今週のキーワード
自分と似た稀なる相手をこそ探すべし