かに座
レッツ連帯活動
微妙な差異を活かしあう
今週のかに座は、松の小枝の松葉のごとし。あるいは、際立った個性に基づくのではなく、微妙な差異を活かしあう連帯性に基づいていこうとするような星回り。
多くの心理学者が人間的個我の有機的統一体を象徴するものとして樹木を使ってきました。そして西洋的とりわけアメリカ人においては、「個人」というのは、もっぱら背が固くて、真っ直ぐで、ひときわ目立ってそびえている、というものであるのに対して、日本の伝統的な庭園では、むしろ横に広がって延びていたり、枯れ木も組みこまれていたりなど、木々はそれぞれ隣り合った木々と調和ある均衡を保つものとして存在しています。
つまり、日本ではどうやら個というものは、緊密な集合関係のなかでの、質的差異を意味するものであって、独立して離れているとか、際立っているということではないんですね。
松の小枝の松葉のように、一見すると互いに非常に相似ているという場合に限り、日本では、そのひとつひとつがほんのかすかに、繊細に異なっているということで真の個別性が成り立っているのだと考えられているのであって、それは西洋において単一性や孤立性のあらわれとして見なされる個別性ということとは、かなり違っているのかも知れません。
9月23日にかに座から数えて「基盤」を意味する4番目のてんびん座へ太陽が移る秋分を迎えていく今週のあなたもまた、そうした日本なりの個性の発揮の仕方ということに立ち戻ってみるといいでしょう。
アーレントの「活動」
現代のもっとも優れた政治思想家の一人とされるハンナ・アーレントは、人間の行為を「労働・仕事・活動」の3つに分けて説明していました。
すなわち、「労働」とはあくまで生命を維持するための行為であり、対して「仕事」とは、消費に抵抗し、人間の個別的生命をこえて存続していく製作物をつくる行為。そして「活動」は、人と人とのあいだで行われる行為であり、そこではさまざまな感覚知覚を統合し、誰かと共有できるような現実感を作り出していく<共通感覚>の存在が前提になっている。
彼女は、これらのうち人間的な「活動」だけが貶められているのだと言うのですが、そんな「活動」に欠かせない「共通感覚」について次のような仕方で言及しています。
共通感覚を奪われた人間とは、所詮、推理することのできる、結果を計算することのできる動物以上のものではない
現代人は効率性や合理性を追求していったことで、かえって生きた自然、生きた身体、生きた人間とつながる術を見失ってしまいましたが、今週のかに座には、そんな現代人が忘れてしまった感覚を、誰かと共に取り戻していくことをぜひ大切にしてほしいと思います。
かに座の今週のキーワード
ハンナ・アーレント『人間の条件』