かに座
あらためて子供に留まる
涙ぐむ
今週のかに座は、大幅に引き延ばされたフラジリティとしての「ネオテニー」のごとし。あるいは、「涙ぐむ」という振る舞いに何か深いものを感じていくような星回り。
人間は他の霊長類や動物と比べても、自分では何もできない未熟な幼児期が異様に長い生き物です。それは単に絶対的に長いだけでなく、寿命の長さに対する割合から見ても、他のどんな生物よりも長いのです。
こうした発育過程が遅滞ないし遅延することで胎児や幼児の特徴が保持される生物学的な現象は「ネオテニー(幼形成熟)」と呼ばれますが、アメリカの人類学者アシュレイ・モンターギュは人間は生物の中でもっとも劇的にネオテニー戦略を活用した生物であり、それは「子供に留まることが人間に文化の可能性をもたらす」のだとも述べています(『ネオテニー』)。
例えば、他のほ乳類のように母親の体毛にしがみついていることのできない人間の赤ん坊はその代わりに大声で泣いて注意を喚起します。それはほとんど生理的な働きなのですが、こうした「涙を流して泣く」という行為は人間の大人にも遅滞されて保持されており、こらえつつも「涙ぐむ」ことで深い共感を促す訳です。
つまり、「涙もろさ」というのは子供を延長させたネオテニーの特徴であり、それこそが人間が人間であろうとするための分母的な時空なのだということ。
21日深夜に自分自身の星座であるかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、つねに新しい存在としての子供性をみずからの中に積極的に見出していくことになるはず。
「すり抜ける」
そうそう、大人にも保持されていた子ども性という意味では、『100歳の華麗なる冒険』という映画もまた、今週のあなたにぴったりの作品と言えるかも知れません。
100歳ともなれば、頭も体もそんなに動かないし、大体の人より年上だし、身体的・社会的な制約や重圧がいろいろかかってきますが、この映画の主人公であるおじいちゃんは、それらをいともたやすく、しかも限りなく優雅に飛び越え、なんなくすり抜けていきます。
予告編を見るだけで、もし壁にぶつかったとしても、いちいち頭や体を叩きつけたり、”大人”の力で壁を粉砕する必要などないのだということをきっと思い出すことができるはず。
彼はまさに、自らの死をいったん通り抜けることで改めてみずからの子ども性に立ち返り、「新生に順応」したのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
産まれ直し