かに座
夢は夜開く
※2021年1月4日~1月10日の占いは休載とさせていただきます。(2021年1月3日 追記)
妖怪の目覚め
今週のかに座は、ゴヤの「飛行する魔女」のごとし。あるいは、ひとつの夢が夜開いていくような星回り。
スペインの画家ゴヤは、1799年に出版された『ロス・カプリチョス』と名付けた版画連作のなかで、魔女たちの姿を描きました。「カプリーチョ」という言葉は「突拍子もない行い」「理性ではなく、気まぐれやこだわりによってなされる人の行い」を意味し、ゴヤはこの連作を通して当時のスペイン社会を風刺していたと言われていますが、「飛行する魔女」という版画には次のようなエピグラフがつけられました。
理性が眠るとき、妖怪がめざめる
より正確に言えば、理性が眠りこむまでもなく妖怪はたえずめざめており、むしろ妖怪の威光の前では理性など手もなく眠りこけてしまうでしょう。
ただし民衆というのは、もっとも恐れているはずのものを、実はひそかに願っているもので、ゴヤによって描かれた魔女の空飛ぶ姿も小さな町の小さな住居にすくすくと育った変身と解放の願望が見せた小さな夢の一つだったのではないでしょうか。
30日に自分自身の星座であるかに座で満月を迎えていく今週は、あなたのこころにいつの間にか育っていた夢がひとつの明確な形をとるまでに成長していたのだということを、改めて実感していくことができるはず。
“それ”の訪れを待ちながら
例えば、メインの登場人物に必ず死者を登場させ彼らに何かを語らせる「能」という表現形式においては、いと高き天の神に向かって祝詞を上げて呼びかけ応えてもらうようなコミュニケーションは有効に機能しません。
代わりに、ただコミュニケーション以前の潜在空間に棲まう大地の霊の出現を、空間を幽玄にしつらえた上で、身体性や偶然性に任せつつ、時にまともな人間であることさえ放棄して待っていく他ないのです。
そしてこうした能に見られるような、明るい未来に向かってビジョンを掲げ着実に前進していくような「変化」ではない、後ろ向きに後退しつつまったく直感に従ってジャンプしていくような「変化」こそ、今のかに座のあなたに相応しいものであるように思います。
冒頭の”それ”とは、そうした類の変化を担う主体であり、ふだん自分が見ている現実の支えでありながら、現実全体を包摂しているより大きな潜在世界であり、生と死が混然一体となった<カオスモス>でもあるのです。
能においては、その<カオスモス>が現実世界へ突出してくるさまは、黒い仮面をかぶった翁=大地霊の出現として表現されますが、あなたの場合はどのような形をとるのでしょうか。この年末年始は、みずからの根源的な願望の姿について、ひとつ自由に想いを馳せてみるといいかも知れません。
今週のキーワード
魔女の宅急便