かに座
新時代予行練習
友だちや知り合いから力を借りる
今週のかに座は、「秋深む充実の緋を身にまとひ」(生駒大祐)という句のごとし。というか、なんか元気玉みたいなことしてみたいよね。
緋色の「緋」は、火を表す赤い色の意味で、紅葉や楓(かえで)のいろどりを表すものとして、奈良時代から使われていた古い色名。
それまで緑一色だった野山の植生が、秋の深まりとともに明るく豊かに色づいていく様は、まさに荘厳ないのちのシンフォニーであり、そうした「充実の緋」を「身にまとひ」というのはある種の変容体験と言っていいでしょう。
例えば、重荷をたったひとりで抱え込むとか、苦しくても我慢して努力し続けるというモードから別のモードへの切り替え。
『ドラゴンボール』で言うと、スーパーサイヤ人みたいな突出した個の力で万事解決できたら痛快ですし、特に若い頃なんかは憧れてしまいますけど、それだと後でいろいろとひずみを生みやすかったりする訳です。むしろ、元気玉みたいに周囲からちょっとずつ力を分けてもらって大きな力を得る技の方が無理がないし、そのために頭を下げられるようになることの方がよほど人として成熟しているように思います。
31日にかに座から数えて「仲間」を意味する11番目のおうし座で、「ネットワーキング」の星である天王星とともに満月を迎えていく今週のあなたもまた、人間だけでなく木や花や鳥や虫などとも分け隔てなくフラットな関係を結んでみるといいかも知れませんね。
病まないために
シベリアの民話には、人間の女性が森の中で若い男と出会い、結婚した後に、相手が熊だと分かるみたいな話も多いのですが、そこでは伴侶が熊だと気付いても特段驚くことなく子供を作り、やがて熊の習性を知り抜いた上で人間界に返されます。
猟師の知恵の根幹は、そうした熊と結婚していた女性から聞いた話にあり、猟師は子を孕んだ母熊や子熊を殺してはいけないという「掟」を必ず守ることで、熊から肉や毛皮をプレゼントしてもらう。少なくとも、そういうことになっている。
なぜこのようなフィクションがつくられたのかについて、中沢新一さんは、熊を殺すことに対する衝撃があまりに大きく、ただ狩っているだけでは精神的に病んでしまうからだろうと述べています(『熊を夢見る』)。
つまり、熊をただ殺した訳でなく、霊の世界に戻しただけで、自分たちは自然の循環を壊している訳ではないのだと確認することで、「癒し効果」を得ていたのではないかと。
今週のかに座も、自分を特別視することなく、もっとやんわりとこの世界にいられるようなフィクションを取り入れていきたいところです。
今週のキーワード
循環系フィクション