かに座
シンプルにいきましょう
私たちはあつかましい
今週のかに座は、土井善晴の『一汁一菜でよいという提案』のごとし。すなわち、人間としてのあつかましさを均(なら)していくような星回り。
自分の“真価”だとか、はたまた“他の人にはまね出来ないオリジナリティー”などを証明しようなどと意気込むと、大抵ろくなことはおきない。
あるいは、斬新なアイデアや華麗なテクニックなど、そうと意識して盛り込もうとすれば、あつかましい「味」しかしてこないものだ。
もっとあっさりとして、余計なものを入れないようにした方が、かえって「味」というものに囚われず、体に入れたいものを入れて、入れたくないものは入れないというシンプルだけれど奥深い基本に向き合っていけるのではないか。
というのが、土井善晴の『一汁一菜でよいという提案』という本を一読した感想。つねに変わりゆく季節の中で、「人間の作為的な知恵や力まかせでは実現できなかったのが日本の食文化」なのだと、あの声で言われているところを想像してみてほしい。
10日に自分自身の星座であるかに座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、「作為的な知恵」や「力まかせ」というところからいったん離れて、ふだん自分がしている営みに改めてまなざしを向けてみるといいだろう。
必殺のあくび
例えば、「あくび」は疲労のしるしと言うより、むしろおなかに深々と空気を送り込むことによって、絶え間なく注意と思考に縛り付けられている精神に暇を出すための合図に他ならない。
そうして精神の働きをばっさり切り捨てることによって、肉体は自分が生きていることだけに満足しており、これ以上考えることには飽き飽きしていることを知らせてくれるのだ。
刺激の多い都市生活にすっかりなじんだ私たちの肉体は不安と快楽によってつねに興奮させられ、あるいは胸郭を締めつけ麻痺させられることに慣れてしまっているが、肉体的にはこれはとても苦しい状態であり、それゆえ慢性的ないらだちが生じてくるのだろう。
いらだちとは自分自身に対する怒りに他ならず、さまざまな拘束から自由にしてほしいという肉体から私たちへの訴えでもある。
今週のかに座は、そんな肉体の訴え、あるいは生命の報復を素直に受け止めて、拘束されたものの解放を宣言していくことになるだろう。
今週のキーワード
できるだけ何もしない方が上等