かに座
根としての秘密を持つこと
冬木の覚悟
今週のかに座は、「大空の風を裂きゐる冬木あり」(篠原鳳作)という句のごとし。あるいは、新たな根を確立してゆかんとするような星回り。
背の高い1本の冬木が立っていて、強く吹いている風を切り裂き続けている、というのが句意。眼前に広がるのは、さびしい冬景色である。枝も葉も鳴り続けているのだろう、それが余計に景色を暗く感じさせる。
ただ、作者はここで「冬木」を擬人化させ、かくも意志的に描きとっている。おそらく、「冬木」には作者自身の姿も投影されているに違いない。ただ1本のみで立つその姿には、孤独に耐える強い心を感じるし、「風を裂きゐる」にはどんな困難に向きあっても決して退かないという決意のほどがうかがえる。
作者は季語を使わない無季俳句の試作を続け、かの有名な「しんしんと肺碧きまで海のたび」という名句を残したが、掲句のような覚悟をもって新興俳句へと突き進んできたのだろう。
27日(水)にかに座から数えて「自己規律」を意味する6番目のいて座で新月が形成されていく今週のあなたもまた、そうした自分なりの覚悟の決め方を模索しているのだと言えます。
不可能な何かへの予感
おそらく、人が何か大事なことを解りかける時というのは、すべからく孤独な時なのではないでしょうか。
つまり、安易な交わりで自分と他人をごっちゃにしてしまうことが間違ってもないであろう、冬の怜悧な空気のようなものを肌で感じている時に初めて、目に見えない真の交わりへと開いていくのだ、と。
このことについて、心理学者のユングは最晩年に出された『ユング自伝』において、次のように言及しています。
「われわれがなんらかの秘密を持ち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」
ユングからすれば、人からもらう滋養とは本質的に自分だけの秘密にはなり得ないものであり、掲句において「冬木あり」と詠んだ作者の境地もまた、恐らくそうした秘密を持つということと表裏一体であったはず。
今週のあなたも又、少しでもそうした境地に自分を立たせていきたいところです。
今週のキーワード
秘密―覚悟―予感