かに座
素足の自分で生きてみる
感覚的な解放感を
今週のかに座は、「はればれと佐渡の暮れゆく跣足かな」(藤本美和子)という句のごとし。あるいは、現在の自分に対する嘘偽りない実感を深めていくような星回り。
「佐渡の暮れゆく」とあるので、対岸の新潟の浜辺あたりにいて、裸足のまま真っ赤に染まった海のかなたを眺めているのでしょう。しかし、「暮れゆく」のに「はればれと」しているというところがまたいい。
おそらくそれは、張り切って新生活をスタートさせていくような「はればれ」ではなく、一日履き続けた窮屈な革靴をやっと脱いでくつろいでいこうとしている時のそれであり、その意味で、この句はテレビやネットの映像を観るときのように視覚ばかりに訴えているのではなく、むしろ触覚ありきの句なのだと言えます。
同様に、8月1日(木)にかに座から数えて「身体的実感」を意味する2番目のしし座で新月の起きていく今週は、武装した理論で自分を背伸びさせようという構えを捨て、素足になったつもりで、自分という存在の質感を楽しんでいきたいところです。
谷川俊太郎からの質問
『谷川俊太郎の33の質問』という本があって、実際に詩人の谷川俊太郎さんが知り合いに33の質問に答えてもらってそれについて語り合うんですが、その21番目の質問に次のようなものがありました。
「素足で歩くとしたら、以下のどの上がもっとも快いと思いますか?―大理石、牧草地、毛皮、木の床、ぬかるみ、畳、砂浜」
ざっと見ると、「畳」と答える人が多いんですけど、ただし書きで、現在彼が住んでいるマンションには畳の部屋はない(武満徹)などと書かれていたりします。そういうものを見ていると、やはり素足には、「なつかしさ」への感覚的な足がかりがあるのかもしれませんね。
いまのあなたなら、どれを選ぶでしょうか? そして、その想像上の感覚に紐づいていている記憶はあるでしょうか?(架空のものであっても)
今週は、そういう遊びをしてみるだけの余裕も保っておきたいものです。
今週のキーワード
なつかしさへの足がかり