かに座
出し惜しみなどしない
思いを差し出す
今週のかに座は、「赤貧の中に子等ありかがやきて葦の芽尖る水辺を帰る」(大野誠夫)という歌のごとし。あるいは、これから先、一体自分は誰と獲得した豊かさを分かち合っていきたいのか、確かめていくような星回り。
掲句に詠まれているのは戦後の貧しい農村風景で、今では時代遅れのようにも感じますが、「赤貧」の現実は今の時代であっても至るところに存在しますし、ただそこに目を向ける人の方がマイノリティーであるだけ。
そして、あえてそうした現実を歌に詠もうとする歌人の根底にあるものは、人間と社会への尽きせぬ関心であり、そこで差し出されているのは愛と呼ぶにはいささか綺麗すぎる複雑な思いの丈でしょう。
もちろん、同情を寄せたり、感傷に浸ったり、悲しんだり、かわいそうだと思うことなんて、相手にとって何の価値もない自己満足に過ぎないという考えにも一定の説得力はあります。
しかし、自分の方から思いを差し出せば差し出すほどに勢いを増していくというかに座の本質に照らせば、やはり問答無用に価値があるのです。
5日(金)にかに座から数えて「社会的使命や役割」を意味する10番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週は、自分がこれまで内的に獲得してきた価値や豊かさをどれだけ出し惜しみせずに差し出し、具体的に共有していけるかということをじっくり考えていきたいところ。
受け取ったものを返していく
「ノブレス・オブリージュ(「高貴なるものに伴う義務」)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
端的に言えば、「持てる者である以上、持たざる者に施しをする責任がある」ということなのですが、今週のあなたにとってこの言葉は先の解釈と少し異なる意味で重みを持ってくるはず。
それは、自身の体験から得られる教訓や戒めをきちんと「刈り取り」「摘んでいく」こと、そして、手元に残すものは必要最低限にとどめ、それ以外は他の誰かへ分配することに対する義務です。
かつて、あなたが幸いにも受け取った善意が、他の誰かの元に届くように。
もちろん、もしあなたが「私は自分の実力ひとつでここまできた」と言い切れるならば、ここでそんな義務を負う必要はないでしょう。
ですが、ひとつ心を鎮めるつもりで、どんな既得権益=先人の与えてくれた恵みが自分を花開かせてくれたのか、その成果をどこにそれをお供えすればいいのか。5分でも10分でも構わないので、どうか今週はどこかでそんなことを考える時間をつくってみて下さい。
今週のキーワード
ノブレス・オブリージュ