かに座
見えないものに惹かれて
自分の中にビック・クエスチョンを持とう
今週のかに座は、ラジウムを発見したキュリー夫人のごとし。あるいは、これまで見えていなかった視界がすっと開けてくるような星回り。
ラジウムを世界で初めて目に見える形で取り出したことで知られるキュリー夫人ですが、彼女のあまり知られていないエピソードとして、純粋ラジウム塩の青い光を「妖精の光」と呼んで、毎晩枕もとに置いて眠っていたというものがあります。
これはラジウムからすごい量の放射線が出ていると、大気中の水分子などを振動させることで青い光に変えて起こる現象なのですが、当然そばに置いておくのはかなり危険で、今ならほぼ自殺行為と見なされるでしょう。
キュリー夫人も、まるきり安全だとは思っていなかったはずで、危険だとどこかで分かっていながらも、その光に魅了されてしまった。それはきっと、これまで見えなかったものが見えるようになってくる過程に、理屈を超えて従いたくなる“何か”を感じたから。
そしてそれは、彼女がずっと疑問に思っていたことと無関係ではないでしょう。
彼女の場合は頭の中の「?」を科学や化学の文脈で展開していきましたが、それはもっと別の文脈―例えば家族に関することや、性に関することでも、何でも良いのだと思います。
今週のあなたもまた、そうした自分の中のビック・クエスチョンを展開していく中で、これまで見えていなかったものが見えてくる過程に少なからず魅了されていくはずです。
大きく飽きるということ
変化のすることのない、みずからの小さな日常の安寧を得るために、個人ではどうしようもない大きな力の犠牲となって、搾取される。しかも自分から進んでそうすることに慣れてしまう。
16世紀の早熟の天才思想家ラ・ボエシはそんな人間の性質を「自主的隷従」と呼びましたが、現代日本の社会制度や常識をこしらえてきた世代の男性などを見ていると、それは中世に限った話ではないように思えてきます。
つまり、認めるのは嫌ですが、それは人間の普遍的な性質のひとつなのかもしれません。
ただ一方で、人間にはひとつの状態が長く続き、極まると「飽きる」、そして真逆の状態へと反転するという性質もあり、それはしばしばビック・クエスチョンの端緒となるようです。
その意味で、あなたの今週のテーマは、まずより大きなレベルで「飽きる」ことにあるのではないでしょうか。
今週のキーワード
ローレン・レドニス『放射能―キュリー夫妻の愛と業績の予期せぬ影響』