かに座
巻き込んだり、巻き込まれたり
夢の渦
今週のかに座は、「野分より眠りに入りて夢多し」(細見綾子)という句のごとし。あるいは、自分の夢に巻き込んだり、誰かの夢に巻き込まれたり。そういう交わりを楽しんでいくような星回り。
野分(のわけ)は台風そのものも指しますが、台風がそれた後の、その名残の風のことも野分と言うのだそうです。
身を横たえて、野分だつ風の音を聞いている。そうしている内に、いつの間にか眠りに落ち、そこで見た夢はあざやかに、色とりどりに、いくつも重なり合い、またきれぎれに続いてはいつまでもやまない。
今週のかに座の見る世界は、まさに掲句のような入り乱れたものになっていきそうです。
ここでの風とは、世間というものが強いる誰かからの干渉だったり、期待の投影だったりを表していて、自分もまたそういう風を起こしたり逆に巻き込まれたりしながら、自分なりに世間を生きていくということ。
いつの間にか巻き込まれていった自分なりの世間を、改めて愛でることができるか、それともそこから脱け出すことを夢みるか。
人によって、そのどちらかに分かれていくことになるかもしれません。
翻弄される命の手ごたえ
巻き込み、巻き込まれと言うと、もう一句「葉も蟹も渦のうちなる土用かな」(依光陽子)という句も思い出します。
植物の「葉」も、小さな「蟹」も、そこには命が宿っているわけで。こうした光景を見ている人間もまた、人生という渦に吸い込まれ巻き込まれている1つの小さな命のように思えてくる。
あるいは逆に、この世には空しいことやつまらぬことなど1つとしてない、誰もが天命、果たすべき何かをもって、この世に生まれてくるのだという気がしてくるようです。
自分が誰で、何を考え、何ができ、何を成し遂げようとしているのか。
真夏のうだるような暑さの「渦」の中で、翻弄される命の手ごたえを確かめつつ、自分に残された余生を生きる動機付けを再確認していくこと。それが今週の星回りの核心なのかもしれません。
今週のキーワード
「 人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」