おひつじ座
魅力ある人間に惹きつけられる
矛盾や裏表をはらんだ相手
今週のおひつじ座は、「今川焼を焼いている悪魔」と相対していくよう。あるいは、誰が、ないし何が自分を導いてくれるのか見極めていこうとするような星回り。
冒頭は、俳優で小説家の戌井昭人が『楢山節考』で知られる作家の深沢七郎を評した言葉です。実際に深沢は小説を書いていたばかりでなく、墨田区の曳舟あたりで今川焼屋のおっさんをやっていたり、各地を放浪したり、ラブミー農場をやったり、もっと若いころはギター弾きだったりと職業もコロコロ変わっていたのですが、そうした肩書き以上に得体の知れない男だったようです。
いわく、「ボケーっとしていると思って近づいたら怒鳴られてしまう感じです。自然体のようではあるが、どこか胡散臭く、田舎者のように振る舞いつつも、凍るような冷徹さと粋さも備わっている。そもそも、あの時代にギターなんて、相当な洒落者である。(中略)それは現実を突き放し、悪魔のような目線で、地面から覗き見している感じです。つまり庶民の中に潜んでいるような庶民ではなくて、庶民の素振りをして今川焼を焼いている悪魔といった感じでしょうか。」
どこか懐かしく親しみやすい今川焼と凍るような冷徹な目線の悪魔が一体化してしまう。そうした「もの凄いふり幅の矛盾」こそが、深沢の魅力に他ならなかった訳ですが、現代社会というのはそうした矛盾や裏表ということをどんどん許さなくなってきているように思います。
17日におひつじ座から数えて「他者」を意味する7番目のてんびん座で満月を迎えたところから始まっていく今週のあなたもまた、身近なところであれ、メディアを通してであれ、ある種の根源的な不可解さを感じる相手に惹かれていきやすいでしょう。
うさんくさくて熱い場所
然るべき相手と出会うには、然るべき場所に出向いていく必要があります。例えば、17世紀後半のイギリスであれば、「コーヒーハウス」という場所がありました。
当時ロンドンで新たな嗜好品として大ブームとなっていたコーヒーですが、ただ、なぜか潜在的に宗教や伝統的な社会制度や価値観とは折り合いが悪いようで、当時も保守的な人たちからは反社会的かつ反キリスト教的な「麻薬」であるとか、青少年やの荒廃を招いているのではないかといった認識も根深くあったようです。
その一方で、ニュートンが『プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)』で披露したアイデアのほとんどはコーヒーハウスで芽吹いたものでしたし、アダム・スミスの『国富論』の原稿もやはりコーヒーハウスで書かれた他、コーヒーハウスではしばしば熱い議論が繰り広げられ、異分野の人たちが集まって意見交換をする場となっており、『ペニー・ユニバーシティ(一銭大学)』などという愛称まであったのだとか。
同様に、今週のおひつじ座もまた、そんなかつてのコーヒーハウスのように、クリエイティブな発想を生み出される場へと自主的にアクセスしていけるかが問われていくはず。
おひつじ座の今週のキーワード
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