おひつじ座
気持ちを漬けていく
感情を発酵させていく
今週のおひつじ座は、「サングラス取り糠床へ膝まづく」(西山ゆりこ)という句のごとし。あるいは、自分個人のささやかな幸せを、最優先していくような星回り。
現代ではもう自宅に糠床(ぬかどこ)を持って、自家製の糠漬けを作っている人の方が少数派でしょうけれど、ここ最近の発酵食品ブームの一環でにわかに糠漬けが再び注目されつつあるように思います。
ただ、一般的には「植物性乳酸菌の発酵食品」と言われがちな糠漬けですが、実際には乳酸菌以外にも、酵母や各種細菌類などの微生物が入り混じりながら独特の風味をつくっている複雑系の発酵によってできているのだそう。
野菜を入れると、それら多種多様な菌たちが発酵を通して滋味あふれる漬け物を返してくれる糠床は、それ自体はいわゆる「生きもの」ではないものの、放っておけばダメになってしまう代わりに実に不思議な力を秘めた「生きものの培養器」であって、掲句のように思わず「膝まづく」のもごく自然なことのように感じてきます。
それは、「サングラス取り」という仕草に示されているような、現世の利害関係や目的意識から解放されていくという意味で、ある種の「無縁所(アジール)」や「聖域(サンクチュアリ)」の感覚にも近いかもしれません。
8日(木)におひつじ座から数えて「特別な絆」や「他者との深い関わり」を意味する8番目のさそり座で上弦の月を迎えていく今週は、そうした自分なりの「糠床」へそっと手を差し入れていくような滋味豊かな時間を大切にしていきましょう。
自分なりの幸せ
外からどんなに孤立して見えようと、自分の求めていた感覚に合致した温もりや、オアシスのような場に出会えたときの喜びに比べられるものなど、この世にはそう在りはしません。
今週のあなたは、その時々のインスピレーションや想定外の事態もうまく取り込みつつ、自分の感覚を頼りに「自分なりの幸せ」を体現してくれている存在に改めて目を向けていくことがテーマになっているのだとも言えるでしょう。
気持ちの置き所に“絶対的な正解”などありはしないのです。
今週は、これからもその時々の「自分なりの幸せ」を取り出していけるようになっていくための‟仕込みの時期”なのだとも言えるでしょう。
今週のキーワード
聖域感覚