おひつじ座
月光的挑戦
何もやらない太陽
今週のおひつじ座は、「ひるのやみに月光菩薩、苦艾酒(アブサン)にほふ嬰児をわが伴へば」(塚本邦雄)という歌のごとし。あるいは自身の、そして誰かどこかの「月」に触れていくような星回り。
月は、なにもやらない太陽。
しかし、一見やらないようでいてやっているというエロチシズムの象徴で、それは頭脳をつかわない思考であり、また機が熟すまで留まり続ける形の行為でもあります。
これは、一生懸命に知識を総動員する思考や、苦しくても前進していく行為としての太陽と対立概念になっているわけです。
例えば、時計の針は、見る時は止まっているように見える。でも、パッと目を離して次に見ると、チキチキ、チキチキと動いている。つまり、あれは連続していながら非連続であり、他には虫なんかもそうですね。
何の話をしているんだこいつはって思うかもしれませんが、要は、そういう月的な部分(「ひるのやみ」)が私たちの中にもあるんじゃないかってことです。
今週のおひつじ座にとって大事なのは、そういうグッとフォーカスしていかないと動いてるんだか何だか分からないような、自分の中の不穏な部分に気が付いていくこと。
今週は、誰もが賞賛するような太陽的自己肯定に背を向けて、ひとり孤独に始める月光的挑戦のようなものへシフトしていくことを、それとなく意識してみるといいでしょう。
「ムーンリバー」
ときどき、この世界の現実の何もかもが夢なんじゃないか、そんなふうに思えてくることはないでしょうか。
けれど、そんな時に見上げた夜空に浮かぶ月を見ていると、そのあまりの生々しさに心打たれて、これだけは間違いなくリアルなんじゃないかと思えてくる。他の何もかもが信じられなくても、これだけは信じてもいいのかもしれないと。
「ムーンリバー」を作詞したジョニー・マーサーも、おそらくそんな感覚を思い浮かべながら歌詞を書いたのではないかと思います。曲の出だしを抜粋すると、
Moon river,wider than a mile (ムーン・リバー、この広く果てしない川よ)
I’m crossing you in style some day(いつの日か、あなたを颯爽と渡ってみせる)Oh,dream maker ,you heart breaker(ああ夢を見させもすれば、心を砕きもする)
Wherever you’re going I’m going your way(あなたが行くところならどこへでも、私はついて行く)
ここでは世の中の基準や、頭で意味づけられる以前の“ナマの世界”に生きているもう1人の<私>として「ムーン・リバー」が登場してきているように思えます。
今週はそんな自分にとってのムーン・リバーと力強く向き合っていく時間のなかで、自分もまた闇夜を照らしだす月のような存在になっていけるかどうかが問われてくるでしょう。
今週のキーワード
月はアナザー・ワールド、すなわち、役に立たない