みずがめ座
つられて踊る阿呆かな
武装を解いて
今週のみずがめ座は、アメノウズメのホト踊りを目撃したアマテラスのごとし。あるいは、「面白い」という感慨を全身で表現していこうとするような星回り。
竹取物語に「月のおもしろう出でたるを見て」という一節が出てきますが、もともと「面白し」とはパッと開けた正面になにか明るい「白い」ものを見たり、その際の野や山の様子が「面白い」のであって、そこから時代を経るごとに見た人の側の心理の方に主眼が置かれて、その晴れ晴れとした気持ちや、愉快だ、感興がある、ということを意味するようになっていったようです。
また平安時代の神道資料である『古語拾遺』では、「面白し」という言葉の語源をより限定的に人の顔色(面)として捉えています。いわく、太陽神アマテラスが天の岩戸に隠れ、世界がまっくらやみになったとき、800万の神々たちが岩戸の前でアマテラスの機嫌を取り持とうと神楽を奏し、巫女のご先祖・アメノウズメがエロと笑いの裸踊りを披露した。やがて笑いに釣られて内側から岩戸が開かれたとき、アメノウズメのすさまじいストリップショーと、それによってすっかり理性が崩壊した神々の顔(面)が喜びにつつまれ輝いており、それを見たアマテラスが「あな(非常に)おもしろ」と言ったことから、「面白し」という言葉が出来たというのです。
いずれにせよ、「面白い」という感覚というのは、もともと誰かを馬鹿にしたり傷つけたりしてウケを取る冷笑や嘲笑などの乾いた笑いとひもづいているのではなく、世界が闇と絶望に包まれたときに、むき出しのいのちが全力で繰り出してくるエロと笑いの大爆発に直接触れたときの生のリアクションのことを言いました。
その意味で、9月18日にみずがめ座から数えて「裸の身体性」を意味する2番目のうお座で中秋の名月(満月)を迎えていく今週のあなたもまた、頭で処理したり返したりするような笑いから、腹の底からの笑いへとどれだけ大胆に転換していけるかがテーマになっていくでしょう。
月並みを破る
たとえば俳句の世界では、最悪の評価を下すとき「月並(つきなみ)」という言葉を使ったりします。
これは表現があまりに「記号的」だということ。つまり、あるリアリティーがあって、それを表そうとするときに使う言葉が定型に収まってしまったり、使われている言葉に負けてしまって生々しさや自然さが感じられてこないとき、その表現は月並なものになってしまっている訳です。
この記号化のプロセスというのは、何かを学んだり、生きて何かを経験していく中で必ず起こってくることですが(中途半端な満足)、逆に言えば、「月並を破る」ことで記号化された実感が、身体的な安らぎやゆるみを経て、再び生々しさを取り戻したその瞬間こそが芸術に触れる喜びであり、その象徴的な現われこそが「笑い」なのではないでしょうか。
逆に言えば、そうした月並みさが破れた際に起きる笑いとは、かならずどこかで本人に体を張ることを求めるところがあり、その意味で自己防衛的な愛想笑いだったり、自分は傷つかないように他人を利用して取るような芸というのはまったくの邪道なんですね。
今週のみずがめ座もまた、すっかり硬直して月並化してしまった自分のふるまいを破るべく、どこかで何かにつられて踊ったり、思い切って体を張ってみるといいでしょう。
みずがめ座の今週のキーワード
最狂のストリッパー・アメノウズメ