みずがめ座
はらわたを優しくつかむ
言葉のもどかしさ
今週のみずがめ座は、「書きえぬ」感覚の深まり。あるいは、間違っても上手に書こうとか、周囲の目を気にしようなどという考えなど、脇に置いていこうとするような星回り。
本当に思っていることを、うまく書けない文章のほうがときには文章としては上である。
これは詩人の荒川洋治の『本を読む前に』からの一節ですが、この「書きえぬ」感覚というのは、顔文字やスタンプやそれに近い決まり文句でのやりとりの機会が増えていくほどに失われていくものです。
現代社会は、そもそも言葉が多すぎる。黙っていられない人、言葉の不在を恐れる人、思ってもいないことを平気で上手に書いてしまう人。そうした人たちは言葉が途絶えることに不安を感じ、間が持たないことに焦れ、言葉をきちんと感じる前に継ぎ足していくことで、かえって虚しさを増大させてしまうのです。
何を見ても、何を感じても、「カワイイ」「ウザイ」「スキ」「キモチワルイ」などの特定の便利な言葉ですぐに処理してしまっていたり、「絆」や「自己責任」など言葉がたどり着こうとしている先がとうに擦り切れてしまっている場合なども、言葉はただの決まり文句となって、私たちのあいだから滑り落ちていきます。
ふっと言葉が浮かんで書きかける。その言葉をじっと眺めたり、何度か繰り返しているうちに、言葉が宙に浮きだして、それ以上書けなくなる。言葉はいつだって舌足らずで、もどかしさが憑き物ですが、何でもないような時に、またふっとその続きが思い浮かんできたりもする。とにかく、意識して書こうとすると、途端にダメになってしまうものなのです。
そして、3月10日にみずがめ座から数えて「実存」を意味する2番目のうお座で新月を迎えていくところから始まる今週のあなたもまた、まさにそうした何かを語ること、自分の言葉にしていくことの不思議さに感じ入っていくことがテーマなのだと言えます。
はらわたをつかむ
例えば服のセンスよりも、香りのセンスがいい人の方が、人から好かれる度合いが強いという話を聞いたことがありますが、これはとても大事な教訓を含んでいます。
それは外側を覆う記号で相手を捉えるのではなく、内側から漏れ出した野生の感じ取った結果であり、そういうものをここでは「内蔵の感受性」と呼んでおきたいと思います。
東京芸術大学で体育の先生をしていた野口三千三氏は独自の体操理論や人間哲学で知られた人物ですが、彼は絵を描くにも歌を歌うのにも「内臓の感受性」が基本となると考えていたようです。そして、それを高めていくために、まず生徒へ“はらわた”を“つかんでもらう”ことが先決だと、「家に帰ったら新聞紙でもひき、その上にしたものを両手でつかみなさい」というような課題を出したのだとか。
今週のみずがめ座もまた、些細な日常の中で、どこまでディープな感性を働かせていくことができるかが問われていくでしょう。それを実践していくには、まず自分の匂いに自覚的になったり、腹のうちにあるものや、等身大の自分というものを把握していくことが不可欠なのだと言えます。
みずがめ座の今週のキーワード
つかむ瞑想