みずがめ座
でくのぼうモード
冷蔵庫にでも入れるように
今週のみずがめ座は、『向き合うてふつと他人やかき氷』(津川絵理子)という句のごとし。あるいは、ごく自然な脆弱さへと回帰していこうとするような星回り。
どんなに仲の良い人間であれ、ふっと距離感を覚えることはある。というより、親しい仲であるがゆえに、不意にひろがったすき間に「ふっと」淋しさを覚えたのでしょう。
普通なら、そこで会話を盛り上げようとしたり、約束を交わしたり、身体的接触をはかったりして、淋しさを多少強引にでも埋めようとするもの。ところが、作者はその代わりにその淋しさを「かき氷」とともに詠むことで、鮮度を長持ちさせることを選んだ。それもまるで冷蔵庫にでも入れるように。
これは気を付けていても、なかなかできることではありません。ともすると自己と対象との関係の不安定さは基本的安心感の乏しさと結びつき、支配的ないし依存的な関係性の原因となりがちですが、ここではそうした蒙昧さとは対照的な、みずからの脆弱さを大切な自分の一部として味わおうとするだけの冷静さと理性がある。
かき氷を食べているときの一時の無言のさなかで、作者は後者を選択したのです。
同様に、6月4日にみずがめ座から数えて「横のつながり」を意味する11番目のいて座の満月に向け月が膨らんでいく今週のあなたもまた、人間関係から無理な力みをとっていくことがテーマとなっていきそうです。
ただ佇んでいることの難しさ
人間だと思って話しかけたら郵便ポストだった。そんな酔っぱらいの話をどこかで聞いたことありましたが、何らかの無機物を生命をもつ有機体、さらに意識をもつ人間と見間違える話としては、例えば宮沢賢治の『月夜のでんしんばしら』が挙げられます。
改めて読んでみると、そうした見間違えを可能にしている条件は単に「大きさ」というより、「たたずみ方」なのかも知れません。びっこを引いたり、ふらふら頭をふったり、よろよろ倒れそうになったり、口をまげていたり…。過度に予定調和的な光景や、それを構成している動きが予測可能なものばかりであるほど、私たちは逆に不自然さを感じてしまうように出来ているのです。
つまり、たたずみ方に何らかのゆらぎや崩れ、歪みのようなものがあって、かつそこに意図やわざとらしさが持ち込まれないとき、それが無機物であったとしても、この世でただひとつ、本当に予測できないものになって、「ただ在る」ということが可能になるのかも知れません。
今週のみずがめ座のあなたもまた、どうしたって出てしまう癖や偏り、不完全な人間らしさをならそうとするのではなく、むしろそれを受け入れて活かしていくべし。
みずがめ座の今週のキーワード
価値ある人間のふりをしない