みずがめ座
現実再入門
新しいニーズ
今週のみずがめ座は、『明易しねむる力の衰えて』(鈴木基之)という句のごとし。あるいは、いつも以上にからだの声に耳を傾けていこうとするような星回り。
「明易し」は夜明けの早いことを言い表した夏の季語。窓の外が明るいと思って起きてみると、まだ仕度を始めるのには早すぎる明け方だった、そんな時に口から漏れ出た嘆息が、そのまま句になったのでしょう。
「ねむる」のにも力がいったのだ。無自覚ながらその力が十分にあった若い頃とは違って、年をとるとねむる力が残されていないために、体の方がこらえきれなくなってちょっとした刺激でも目が覚めてしまう。そんな自身の発見に、感傷的になるのでもなく、かといって客観的というほど冷めた感じで受け入れる訳でもなく、ただ歌に乗せて詠み、そっとノートを閉じた。
そんな何気ない一連の手続きを、作者はある夏の朝におこない、それがめぐりめぐって、別の時間、別の場所にいる私たちの意識に触れて、しみ込んでいく。
ここのところ、自分はゆっくり寝られているのだろうか、しかと「ねむる力」に巻き込まれ、ひとつになれているだろうか、と。
その意味で、6月7日夜にみずがめ座から数えて「小さな死」を意味する8番目のおとめ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、いまの自分が直面している新しいニーズに開かれていくべし。
『東京一年生』
竹原ピストルさんの『東京一年生』という曲をご存知でしょうか。夢を追いかけて東京に出てきた主人公の気持ちをストレートな歌詞とともに歌った曲ですが、おそらく実際に竹原さんが過去に感じていたことを歌っているのでしょう。
生きづらい、暮らしづらい、うまく呼吸ができない。そういうことは誰しもが一度ならず感じているはずですが、今のみずがめ座もまたそれを強く感じている人が多いかも知れません。みんなと同じように日常に溶け込めない。これも「ねむる力の衰えて」のバリエーションに他なりません。
歌詞に引き付けるなら、それは「夢があるから」であって、けっして「街のせいじゃない」んです。「例えば人ごみが息苦しかったなら、まずが自分が消えることだよ。さもなくば、窒息するまで歌いきるんだ」。
街に染まって誰かを汚い罠に陥れる側の人間になるのではなく、逆に堅苦しい価値観やガチガチに固められた奴隷根性に風穴をあけて緩めてあげられる側の人間になろうと。
そんな風に今週は、できるだけ自分のなかの声なき声と向きあいつつ、それでいてどこかさっぱりと過ごしていきたいものです。
みずがめ座の今週のキーワード
現実一年生に逆戻り